最新記事

国際交流

ハリウッドも驚く韓国の映画撮影 日韓スタッフが衝突する共同制作の実態とは?

2019年9月4日(水)19時35分
ウォリックあずみ(映画配給コーディネーター)

初めの韓国映画出演について、今まで経験したことのない撮影スタイルに驚いたと語るミーガン・フォックス 톱스타뉴스/TopStarNews - YouTube

<韓国人の国民性としてよく語られるのが「せっかち」だという点。それが映画撮影の現場でハリウッドを凌ぐシステムへと繋がっていた>

海外旅行に行くと、日本では見ることができないスタイルを目にしたり、カルチャーギャップを体験したりする。これも楽しい旅の醍醐味の一つだ。外国との合作映画や俳優たちが海外の映画界で活躍する場が増えてきている今、映画の製作現場でも新鮮な驚きを発見する場面が増えているようだ。

朝鮮戦争中に行われた「長沙里上陸作戦」を描いた韓国映画『長沙里:忘れられた英雄たち』(クァク・キョンテク、キム・テフン監督)に、ハリウッド女優ミーガン・フォックスが出演し注目を集めている。「長沙上陸作戦」は、1950年連合軍側が反撃するきっかけとなった仁川上陸作戦の前日に行われた陽動作戦。ミーガン・フォックスはニューヨーク・ヘラルド・トリビューン紙の従軍記者で、のちにその取材記事で女性として初めてピューリッツァー賞を受賞したマーガレット・ヒギンズを演じている。

韓国映画への出演が初めてだったミーガンは、撮影現場で印象的だったことについて質問された際、「次のシーンを準備している間に、ついさっき撮影したシーンを現場で編集していた。ハリウッドでは見たこともない撮影方法だった」と語った。

韓国では「現場編集」という役割のスタッフがいる。彼らは、監督のOKが出て撮影が終了したシーンを、その場で仮編集していくことが仕事だ。監督は撮影したシーンを全体の流れの中で巻き戻して確認したり、ずいぶん前に撮ったシーンの続きを撮影する際は俳優たちが以前の演技を見直して声のトーンや感情を掴んだりするために、この現場編集が役立っている。映画業界の最先端をいくハリウッドの現場で、この現場編集という方法がなかったというミーガンの発言に韓国国民は驚き大きな話題を呼んだ。

ちなみにこの「現場編集」、ミーガンだけがハリウッドで知らなかったという訳ではない。今年12月に公開予定の『スター・ウォーズ/ザ・ライズ・オブ・スカイウォーカー』は撮影前に監督が交代。撮影終了から公開までの期間が4カ月も短くなったため編集のメリアン・ブランドンは撮影現場で並行して編集をやりたいと監督のJ.J.エイブラムスに申し出たところ、監督は「そんなことやったことがないからダメだ」と却下したという(最終的に監督はその提案を受け入れ、効率的な方法だととても気に入ったそうだ)。


『長沙里:忘れられた英雄たち』予告編 Warnerbros Korea / YouTube

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    4年間SNSをやめて気づいた「心を失う人」と「回復で…
  • 10
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中