最新記事

映画

「千と千尋の神隠し」中国大ヒットを支えた黄海とは? 韓国では固定ファンもいる映画宣伝のデザイナー

2019年6月27日(木)20時30分
杉本あずみ(映画配給コーディネーター)

中国で大ヒットとなった『千と千尋の神隠し』はデザイナー黄海の手になるポスターが話題となった (c)电影千与千寻 - 微博

<SNSや動画サービスが発達した今でも、映画ファンが新作について最初に触れるものといえばポスターやブローシャーなどのキービジュアル。これらの出来の善し悪しは観客動員にも影響を与えるようだ>

6月21日、中国で映画『千と千尋の神隠し』が初公開された。日本では歴代興業収入1位の大ヒット作としておなじみのこの作品だが、中国では去年の12月公開された『となりのトトロ』に続き公式に封切られたのは今回が初めて。中国では国内映画産業保護のため、外国映画は年間34本という上映制限があるため18年遅れての初公開となったのである。初日の興行収入は5410万元(約8億4500万円)を記録し、同じく21日に封切りされたハリウッド映画『トイ・ストーリー4』の3倍の収入をあげ、上々の滑り出しとなった。

『となりのトトロ』『万引き家族』も手掛けた黄海

映画公開や興行成績はもちろんだが、それよりも話題となったのは中国版のオリジナルポスターだ。日本でもTwitterで広く拡散された為、目にした方もいるかもしれない。この作品のポスターを手掛けたのは、黄海(ホアン・ハイ)という中国のデザイナーである。『千と千尋の神隠し』以外にも、日本映画では『となりのトトロ』『万引き家族』も担当し、情緒のある芸術性の高い素晴らしい作品に注目が集まっている。

2007年からフリーで映画などのポスターデザインを手掛けており、すでに中国のみに留まらず海外でも「中国映画のポスターを変えた男」と呼ばれ有名だ。中国映画の国際版ポスターも数多く担当しているため、中国映画が海外の映画祭などで上映される際、彼の手掛けたポスターも一緒に注目される。特に、中国やアジアのテイストを取り込んだ作品が多いので欧米の人びとには印象的に映るだろう。『万引き家族』のポスターは浮世絵のような5人の家族の後ろ姿に、大きな傘が彼らを守るように描かれていて、美しさと家族の繋がりの儚さがひと目でわかる作品を象徴したようなポスターだった。

この黄海氏以外にも最近、中国の映画ポスターが話題となることが多い。ハリウッド版ゴジラの最新作『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のティーザーポスターでは、一見、桜舞い散る日本の庭園のようなビジュアルが展開される。池の向こう側には富士山もかすかに見える美しい絵である。これの一体どこがゴジラなのか。見た瞬間わからなかったが、桜と池から続く小川で縁取られたのがなんとゴジラの姿なのだ。このだまし絵のようなポスターアイディアが目を引きSNSで広く拡散された。各国、天に向かって火を噴くゴジラや雄叫びを上げる恐ろしいゴジラの姿を前面に出している中、メインポスターではないにしても、中国版ポスターでは日本の美でゴジラを表現した発想には驚かされる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

金総書記、プーチン氏に新年メッセージ 朝ロ同盟を称

ワールド

タイとカンボジアが停戦で合意、72時間 紛争再燃に

ワールド

アングル:求人詐欺で戦場へ、ロシアの戦争に駆り出さ

ワールド

ロシアがキーウを大規模攻撃=ウクライナ当局
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ISSUES 2026
特集:ISSUES 2026
2025年12月30日/2026年1月 6日号(12/23発売)

トランプの黄昏/中国AI/米なきアジア安全保障/核使用の現実味......世界の論点とキーパーソン

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 5
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 6
    アベノミクス以降の日本経済は「異常」だった...10年…
  • 7
    「衣装がしょぼすぎ...」ノーラン監督・最新作の予告…
  • 8
    【世界を変える「透視」技術】数学の天才が開発...癌…
  • 9
    中国、米艦攻撃ミサイル能力を強化 米本土と日本が…
  • 10
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 1
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 2
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 3
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指すのは、真田広之とは「別の道」【独占インタビュー】
  • 4
    「食べ方の新方式」老化を防ぐなら、食前にキャベツ…
  • 5
    中国、インドをWTOに提訴...一体なぜ?
  • 6
    【過労ルポ】70代の警備員も「日本の日常」...賃金低…
  • 7
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「…
  • 8
    海水魚も淡水魚も一緒に飼育でき、水交換も不要...ど…
  • 9
    批評家たちが選ぶ「2025年最高の映画」TOP10...満足…
  • 10
    待望の『アバター』3作目は良作?駄作?...人気シリ…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中