最新記事

映画

新『ベスト・キッド』に合格点

2010年9月13日(月)14時37分
デーナ・スティーブンズ(脚本家)

 ハンはその技をどこで習得したか、どの程度の力量か。本人は語ろうとしないが、チョンと子分たちも出るカンフーの試合で勝てるよう、ドレを指導してくれることになる(ちなみに、映画の原題はリメーク版も「ザ・カラテ・キッド」だ。オリジナル版の人気にあやかるためだろうが、このタイトルはどうだろう。アメリカ人の観客の多くは空手もカンフーも区別がつかないかもしれないが、アジアの観客は違和感を持つだろう)。

 素材はオリジナル版の焼き直しでも、演出の工夫がそれを補っている。いや、完全に補ってはいなくても、楽しめる場面がたくさんある。例えば、ハンがドレに上着を掛けろ、上着を取れ、上着を着ろと次々に命令して、ドレが面食らうシーンだ。

 ドレ役のジェイデン・スミスは、ウィル・スミスとジェイダ・ピンケット・スミスの息子で12歳。しなやかで敏捷、自信に満ちた小柄な少年は、オリジナル版の不器用でひ弱なダニエルとは正反対。演技の才能よりも親の七光が先行している感もあるが、父親のウィル同様、この子も持ち前の魅力で観客をノックアウトする。

ジャッキーの抑えた演技

 一方のジャッキー・チェンは、このところ役を重ねるたびに、無駄をそぎ落としているようだ。この映画では、彼は1回だけ格闘し、1回だけ泣き、ほとんどしゃべらず、笑顔も見せない。それでいて、彼が演じる無表情なハンは最高に観客の心を揺さぶる。

 リメーク版には難点もある。格闘場面は、血こそ飛び散らないものの、観客の年齢層を考えれば、暴力的過ぎる。ドレが新しい環境になじんでいく過程もあまりに安易だ。中国語を覚えなくても周囲に受け入れられるし、アフリカ系アメリカ人に向けられる冷たい目にもちょっとしか触れていない。

 それでも、子供向け映画の多くが大人の感性で作った物語を子供に押し付けたものにすぎないなかで、子供の気持ちに寄り添ったこの映画には好感が持てる。

 私にドレと同じくらいの年頃の息子か娘がいたら映画館に連れて行く。ただしその前に、やはり最高におすすめのオリジナル版をうちのリビングで上映するけれど。

Slate.com 特約)

[2010年8月11日号掲載]

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

トランプ氏、ノーベル賞逃し軌道修正 「もう平和だけ

ワールド

イラン、インターネット遮断解除検討か 国営TVハッ

ワールド

米の脅迫に屈さず、仏独財務相 反威圧措置も選択肢に

ワールド

高市首相23日解散表明、投開票2月8日 与党過半数
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で国境問題が再燃
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」も子に受け継がれ、体質や発症リスクに影響 群馬大グループが発表
  • 4
    AIがついに人類に「牙をむいた」...中国系組織の「サ…
  • 5
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 6
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 7
    「リラックス」は体を壊す...ケガを防ぐ「しなやかな…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 10
    中国ネトウヨが「盗賊」と呼んだ大英博物館に感謝し…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 3
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試掘の重要性 日本発の希少資源採取技術は他にも
  • 4
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い…
  • 5
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 6
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 9
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の…
  • 10
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中