最新記事

株の基礎知識

東証再編、あえてスタンダード市場を選ぶあの企業の「事情」

2022年2月28日(月)12時00分
佐々木達也 ※かぶまどより転載
株式市場

monzenmachi-iStock.

<4月4日から東証の市場区分が変更される。東証1部の8割以上がプライム市場に残るのでは本格的な再編にならないのではないか、との厳しい意見もあるが、実はプライム上場の基準を満たしながらもスタンダード市場を選ぶ企業もある>

東証が新しく生まれ変わる

東京証券取引所の市場区分の変更(再編)が4月4日に迫っています。

現在の東証には、流動性が高くメイン市場ともいうべき市場第一部(東証1部)、新興企業向けの東証マザーズとジャスダック(スタンダード、グロース)、そして市場第二部(東証2部)という大きく分けて4つの市場があります。

これは、2013年に東証と大証(大阪証券取引所)が統合した時期からのものです。

この市場区分に対しては、「上場維持の審査基準が緩いため、企業が持続的に企業価値の向上を目指す動機づけとして弱い」「ジャスダックやマザーズ、東証2部を比較してもコンセプトが曖昧」といった指摘も多く、区分を見直して現状に即した形とすることが今回の再編の狙いとされています。

■新たな3つの市場区分

今回の市場再編によって、4月からは新たに設けられるプライム市場、スタンダード市場、グロース市場という3つの市場で取引が行われることになります。

kabumado20220225standard-chart1.png

●プライム市場
プライム市場は、上場基準の最も厳格な、大型企業をターゲットとした市場です。株主数800人以上、流通株式の時価総額100億円以上、最近2年間の利益合計が25億円以上または売上高が100億円以上、かつ時価総額1000億円以上などの基準が設定されています。

今回の市場再編において、株式取引の円滑な流通や公正な価格形成を目的として、これまでよりも重視されている流通株式比率は、プライム市場では35%以上が必要になります。

流通株式比率とは、市場で取引されている流動性のある株式の比率を差し、全上場株式数から「上場株の10%以上を保有する大株主」「自社株」「役員などの持ち株」を引いた株式の割合です。

●スタンダード市場
スタンダード市場は、プライム市場に次いで高い上場基準を有し、従来の東証1部や東証2部の中小型株のほか大型の新興株などが対象と見込まれています。

コンセプトは「公開された市場における投資対象として一定の時価総額(流動性)を持ち、上場企業としての基本的なガバナンス水準を備えた企業」のための市場となっています。

●グロース市場
グロース市場は,3市場の中で上場基準が最も緩く、高い成長性を有しながらも事業の実績の観点からは相対的にリスクが高いと見られる新興企業を対象とした市場です。

再編で東証はどう変わる?

2021年9月から12月にかけて、東証はすべての上場企業に対して、再編後にどの市場での上場を希望するかの申請手続きを求めました。

その申請によると、その時点で東証1部に上場していた2,185社のうち、プライム市場への移行を希望したのは1,841社、残りの344社はスタンダード市場を希望しました。スタンダード市場への移行希望では合計で1,477社、グロース市場には459社が上場する予定となっています。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

中国国防相、「弱肉強食」による分断回避へ世界的な結

ビジネス

首都圏マンション、8月発売戸数78%増 価格2カ月

ワールド

米FRBのSRF、今月末に市場安定の役割果たせるか

ワールド

米政権、政治暴力やヘイトスピーチ規制の大統領令準備
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍、夜間に大規模ドローン攻撃 国境から約1300キロ
  • 3
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 4
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ…
  • 5
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    中国経済をむしばむ「内巻」現象とは?
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中