最新記事

インタビュー

出口治明「日本は異常な肩書社会。個人的な人脈・信用はなくても実は困らない」

2020年3月30日(月)16時50分
ニューズウィーク日本版ウェブ編集部

――日本の場合、長らく企業が生活の中心の社会でしたから、特殊ですよね。

ええ、特に、日本は不思議な社会です。例えば僕が、ある会社に電話して、「大学のゼミの友達ですが、〇〇君を呼んでください」というと、電話に出た人は、「どちらの出口さんですか」と聞き返すんですね。

それでAPUの出口です、ライフネット生命の出口ですというと、「はい、わかりました」と納得して、つないでくれる。所属がすごく価値を持つんですよ。これは今でもあまり変わりませんよね。

――仕事に全く関係のないプライベートの集まりでも名刺交換したがる人がいますし、会社の話ばかりする人もいますね。

海外は全く違いますよ。初めてロンドンに行った時に気がついたんですが、名刺をくれないケースがたくさんあるんですよ。「トムと呼んでくれ」で終わりです。要するに、「お前は俺に興味があるんだろ、俺はトムだ」と。

――肩書はどうでもいい。俺と付き合うならトムでいいじゃないかという話ですね。

はい、でも、考えてみれば、むしろ、その方が自然なんですよ。日本はやっぱり異常な肩書社会で、その人を信用しているのではなくて、「〇×会社の課長」というポストで信用しているわけですね。例えば、その人に多少の違和感があっても、○×の課長ならそれはそれで問題ないと収めるわけです。

個人的な人脈や信用は、なければないで、普通の職場で普通に働いていれば、特に困らない。組織に所属していれば、その肩書でどうにかなる。反面、肩書がなくなったら、途方に暮れる人が多いわけですが。

――昔は「会社辞めればただの人」でも、退職後の人生は短かったですからね。これからは人生100年時代ですから、途方に暮れるには長過ぎます。そうした中、個人という単位では、いかにして信用を高められるのでしょうか。

結局、中長期的に評判をいかに高めるかです。人は皆、好き嫌いがあるから、味方もいれば敵もいます。みんなに好かれようとしても無理です。普段から言行一致を心がけてある程度実践できていれば、足を引っ張る人はそんなに出てこないでしょう。

敵が多くなければ信用は少しずつ増えていきます。プラスマイナスでプラスになればいい。そのぐらい、ゆるく考えておいたらいいのではないですかね。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

米ペプシコの第1四半期決算、海外需要堅調で予想上回

ビジネス

仏ケリング、上期利益が急減の見通し グッチが不振

ワールド

トランプ前米大統領、麻生自民副総裁と会談=関係者

ワールド

北朝鮮「圧倒的な軍事力構築継続へ」、金与正氏が米韓
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 6

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 7

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 8

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 10

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中