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iDeCoは「絶対に儲かる資産運用術」? 実は、落とし穴も少なくない

2018年9月27日(木)19時30分
網代奈都子 ※株の窓口より転載

年金ゆえの深〜い落とし穴

こうして見てみると、iDeCoはたしかにお得です。どうせ同じ投資信託を買うならiDeCoにしたほうがいいじゃん、と思えてきます。しかし、あえて言いたい。決して万人に勧められる商品ではないということを。ここからは私の実体験をもとに、見落とされがちな落とし穴を解説します。

私は何度か転職を繰り返している会社員ですが、最初に勤めた会社が企業型確定拠出年金に入ることになり、言ってみれば「入らされる」形で確定拠出年金を始めました。しかし数年後にその会社を退職し、次の就職までは9か月ほど間が空きました。

どんどん積もる手数料の罠

求職中の私のもとに、iDeCoを預けている金融会社から運用状況の報告書が届きました。それを見てびっくり! 数か月で数千円のマイナスになっていたのです。私は、ほぼノーリターンでいいからノーリスクの商品を選択していました。それなのに資産が減っているのです。

当たり前のことですが、iDeCoの運用には銀行や証券会社などの金融機関が携わるので、その運営管理手数料を取られるんですね。会社勤めをしている間は、毎月一定の金額がiDeCoに振り込まれて資産が増えていくため、手数料の存在に気づいていなかったのです。

手数料は多くの場合、月300~400円程度。手数料0円を謳う金融機関も増えていますが、実は国民年金基金連合会などへの手数料(年間2000円ほど)が別途かかります。iDeCoは年金ですから、60歳までひたすら払い続けることになります。塵も積もれば......ですので注意しましょう。

国民年金もちゃんと払いましょう

手数料に泣いた私に、あくどい考えが浮かびました。国民年金は自分ではなく親世代に払うものですが、iDeCoは、自分が払ったお金は自分に戻ってきます。それならば、国民年金を払わずにiDeCo分だけ払えばいいのではないか!と。

しかし残念ながら、そういう不届き者が出ない仕組みになっていました。日本の年金制度は3階建てで、1階が国民年金、2階が厚生年金、その上がiDeCoです。つまりiDeCoは、国民年金など下階を払っているからこその資格なんですね。

国民年金の保険料を免除されていたり、未納だったりする場合には、たとえiDeCoの掛金を支払っても返金されてしまいます。しかも手数料を引かれて......。だから、iDeCoで年金を積み立てたいなら、国民年金の保険料はちゃんと払っておきましょう。

60歳になるまで下ろせない!

そんなこんなで、もうiDeCoなんてやめてやる!と思ったのですが、「年金」という性格の金融商品を簡単に解約できたら、そもそも制度として成り立ちませんよね。老後の資産形成を目的とした年金だからこそ数々の税制優遇があるわけで、資産は原則60歳まで引き出すことができません。

でも、貯蓄形成のつもりでiDeCoを始めた人には、これはとてつもない落とし穴です。いくら「老後のため」と考えていたとしても、「重い病気にかかった」「子供が私立校に行く」「ずっと働き続けるはずだった会社を辞めた」など、人生には想定外の出費が付き物です。

そこにまとまったお金があるのに必要なときに使えないのであれば、「貯蓄」としては本末転倒と言わざるを得ません。ライフスタイルがよく変化する人は特に、そうした場面では、毎月こつこつと貯めているiDeCoはなんの役にも立たない......ということを覚えておきましょう。

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