【人手不足の真相】データが示す「女性・高齢者の労働参加にもう期待できない」明確な理由
しかも、75歳以上の労働参加割合は近年もそれほど伸びていません。2012年から直近2024年までのデータを労働力調査(内閣府)で振り返ると、65~69歳では労働参加率が38.2%→54.9%(+16.7%)、70~74歳では24.4%→35.6%(+11.2%)と大幅アップしています。対して75歳以上だと8.2%→12.2%と労働参加割合は低く、その伸びも4%にとどまります。
つまり、高齢者の社会参加といっても、頼りになるのは前期高齢者なのです。

そして、いよいよ核心なのですが、現在、ベビーブーム世代(1947~1951年生まれ)が次々に後期高齢者入りしているため、前期高齢者が激減している......(図表⑪)。
製造業や建設業、飲食業、宿泊業などは、その多くがベビーブーム世代の就労長期化により支えられています。とりわけ、主婦パートや学生バイトの枯渇感が色濃くなってきた飲食・サービス業では、指導マニュアルなどを見直し、高齢者の受け入れに力を注いできました。その人材補充策ももはや、風前の灯という状態なのです。
ここまででおわかりいただけたでしょうか。
・少子化による人口減少と大学進学率の上昇で、現業職領域では人材不足が増幅されている。
・かつて現業職領域は、3つの人材補強策(衰退産業からの受け入れ、主婦層、高齢者)があったが、そのどれもがもう通用しない。
という状況なのです。だから昨今、繁華街の飲食店では、「深夜時間のパート時給1500円!」という求人張り紙が目立ったりするのです。

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[筆者]
海老原嗣生(えびはら・つぐお)
サッチモ代表社員。大正大学表現学部客員教授。1964年東京生まれ。大手メーカーを経て、リクルートエイブリック(現リクルートエージェント)入社。新規事業の企画・推進、人 事制度設計などに携わる。その後、リクルートワークス研究所にて雑誌「Works」編集長を務め、2008年にHRコンサルティング会社ニッチモを立ち上げる。『エンゼルバンク―ドラゴン桜外伝』(「モーニング」連載、テレビ朝日系でドラマ化)の主人公、海老沢康生のモデルでもある。近著『静かな退職という働き方』(PHP新書)が各方面で話題を呼んでいる。





