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【インタビュー】10億ドルブランドを手放したボビイ・ブラウン、「再出発」でつかんだ本当の成功とは?

BEYOND SKIN DEEP

2025年10月26日(日)10時00分
H・アラン・スコット(ライター、コメディアン)
自分の名前を冠した美容帝国を手放し、60歳を過ぎて新ブランドを立ち上げたボビイ・ブラウン BEN RITTER

自分の名前を冠した美容帝国を手放し、60歳を過ぎて新ブランドを立ち上げたボビイ・ブラウン BEN RITTER

<人生の新しいステージは自分でつくる「インディビューティー」の元祖ボビイ・ブラウンは立ち止まらない>


▼目次
動けないときに動き始める
シニアから火が付いた人気

ボビイ・ブラウンにとって、忍耐は美徳ではなく邪魔なもの。メーキャップアーティストで起業家でもあるブラウンは、企業のカレンダーではなく自分の直感のタイムラインで動く。

「私には忍耐がないの。この新製品、気に入ったわ。いつ発売? 2月? 冗談でしょ。11月に出しましょう。パッケージが間に合わなくてもいいから──そんな感じね」

この突き進む力こそ、彼女のキャリアの原動力である。9月に刊行された回想録『スティル・ボビイ(Still Bobbi)』は、化粧品ブランド「ボビイブラウン・コスメティクス」を10億ドル規模の美容帝国に育て上げそれを手放し、自分らしいやり方で(再び)初めからやり直した女性の物語だ。次の舞台は、新たに立ち上げたブランド「ジョーンズロード・ビューティー」だ。

「私の物語が人々に力を与えることを願っているし、そうなると信じている。『彼女がこんなことを成し遂げて、乗り越えられたのだから、私にもできる』と思ってほしい」

ブラウンの人生の第2幕から力をもらうには、第1幕の大胆さを知っておかなければならない。

「夫と私はニュージャージー州モントクレアの自宅でビジネスを始めた。2人とも32歳だった。最初はボビイブラウン・コスメティクスという名前もなくて、リップスティックを作って売っていた。インディビューティー(独立系美容ブランド)という言葉が生まれる前から、私たちはインディビューティーだったのよ」

回想録『スティル・ボビイ』

9月に回想録『スティル・ボビイ』を出版 COURTESY OF S&S/MARYSUE RUCCI BOOKS(※画像をクリックするとアマゾンに飛びます)

1991年にボビイブラウン・コスメティクスを設立し、デパートに次々と出店して人気を集めた。95年にエスティローダーに7450万ドル(と報じられた金額)で買収された後も、ブラウンは雇われの立場でブランドのクリエーティブ部門を統括した。買収後も彼女のメーク哲学は変わらなかった。「ノーメーク・メーク。つまり、自分らしさを保ちつつ、より良く見せること。それがずっと私のメークだから」

このシンプルな理念が、ボビイ・ブラウンの名を世に知らしめた。しかし、エスティローダーの傘下に入って数年がたつと、企業社会の重たさを感じるようになった。

「企業の世界にいた頃は、ハーバードやスタンフォードのビジネススクールを卒業した優秀な女性たちを次々に採用した。私も会議に出て戦略を立てているうちに、興味がなくなってしまった。退屈だった。正直なところ、そうした計画の半分は日の目を見なかった」

若きメーキャップアーティストだった頃のブラウン

80年代、若きメーキャップアーティストだった頃のブラウン(左) COURTESY OF BOBBI BROWN

こうした姿勢や、自分が信じない流行には迎合しないところが、周囲と摩擦を生むようになった。例えば、ソーシャルメディアから流行が始まったコントゥアリング(ハイライトとシェーディングを使って立体感を強調するメーク)は、「今でも大嫌い」と言う。

2016年、ブラウンはエスティローダーを去った。「私が離れた直後に、彼らはコントゥアリング用のパレットを出した。私が絶対にやらなかったから」

ボビイブラウン・コスメティクスは「最初の子供」であり、自分のアイデンティティーそのものだった。その別れは突然で、感情的なものでもあった。

「最後の決断は、自分でも予想していないタイミングになった。最初の2日間は近所の人たちとテキーラを飲んで、みんなで笑って、私は泣いて、また笑って」

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