アルゼンチン経済にまさかの奇跡、インフレ克服と成長回復のカギは

Argentina's Javier Milei Keeps Proving His Critics Wrong

2025年7月9日(水)18時47分
ヘスス・メサ

ミレイの側近たちでさえ、この状況が危ういことを認めている。チリの元中央銀行総裁ホセ・デ・グレゴリオはピーターソン研究所のパネル・ディスカッションで、「彼らが正しいことをしているのは認めざるを得ない。成功する可能性は非常に高い。ただ、ここがいかに厳しい場所か我々は知っている」と語った。

ミレイはその急激な財政金融引き締め政策で経済に安定を取り戻したと評価されているが、経済学者たちは、その回復基盤はまだ脆弱だと警告する。

「投資も工業生産も低迷しており、さらなる対外借り入れなしには持続できそうにない」と、アゴスティネッリは言う。「持続的な発展を遂げる国には開発計画がある。ミレイはすべてを市場に委ねており、それでは持続的な成功はほとんど不可能だ」

さらに彼はこう指摘する。「人為的なペソ高は、海外旅行に行ったり輸入品を買える一部の人々にしか恩恵をもたらさない。歴史を見れば、その行き着く先はたいてい通貨切り下げに失業の増加、そして格差拡大だ」

アルゼンチンの元中央銀行総裁マルティン・レドラドは、インフレ抑制という目先の成果にとらわれ、より深い構造問題への対応が遅れる危険性を指摘した。

「我々はインフレ退治で満足してしまっているが、それで安心してはいけない」とレドラドは現地紙ロス・アンデスに語った。税制改革の抜本的な議論が進んでおらず、企業の資本規制も残っていることが、回復の危うさを物語っているという。

先端医療
手軽な早期発見を「常識」に──バイオベンチャーが10年越しで挑み続ける、がん検査革命とは
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ブラジル、米50%関税に報復示唆 ルラ大統領「相互

ワールド

英仏首脳、核抑止で連携合意 ウクライナ支援も強化へ

ビジネス

米金利上昇リスク、市場は過小評価=JPモルガンCE

ワールド

米国務長官、ASEAN地域の重要性強調 関税攻勢の
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、「強いドルは終わった」
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 5
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 6
    アメリカの保守派はどうして温暖化理論を信じないの…
  • 7
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 8
    昼寝中のはずが...モニターが映し出した赤ちゃんの「…
  • 9
    アメリカを「好きな国・嫌いな国」ランキング...日本…
  • 10
    アルゼンチン経済にまさかの奇跡、インフレ克服と成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 3
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 4
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸…
  • 5
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 6
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコ…
  • 7
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 8
    「飛行機内が臭い...」 原因はまさかの「座席の下」…
  • 9
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 10
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 8
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 9
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
  • 10
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中