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ウクライナ戦争

2年半の捕虜生活を終えたウクライナ兵を待っていた、妻の「思いがけない反応」...一体何があったのか

THE STORY OF KIRILL, A RUSSIAN PRISONER

2024年12月5日(木)16時52分
尾崎孝史(映像制作者、写真家)

帰還した兵士は治療やリハビリのため軍の病院に直行した。キリルは複雑骨折をした膝と、壊死しかけた足の指の治療が必要だった。診察の合間、キリルは病室でアンナに電話をかけてみた。しかし、つながらない。

しばらくして、キリルはベッドに座り語り始めた。「彼女は僕を取り戻すため世界中を回ってくれていた。本当に素晴らしい人で、誇りに思っている。でも、その妻がそばにいない。実の母や愛犬には会えたのに......。落ち込むよ」


キリルは、アンナが西ヨーロッパへの移住を決めたと確信している。一方、戒厳令による成年男子の移動制限は帰国した元捕虜にも適用される。これでは2人の関係を立て直しようもない。

キリルはスマートフォンに映る戦友との集合写真を指差し、つぶやいた。「彼は死んだ。彼もだ......。妻との関係がうまくいかなかったら、また戦列に復帰する。仲間たちの復讐をするために」

10月16日、アンナのSNSのアカウント名が旧姓に変わっていた。その日、キリルは全面灰色の画像をSNSにアップした。10月28日、スビャトスラフは3歳になった。

アゾフ兵士の捕虜約900人は、今もロシアのどこかで拘束されている。現地では厳しい冬を前に開戦1000日を迎えた。

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