最新記事
中国不動産

不動産大手への集中が招いた中国バブル崩壊

BUBBLE THEORY

2024年8月29日(木)11時50分
ジュリア・カーボナロ(本誌記者)
恒大集団が建てた高層住宅

国内第2位の恒大集団が江蘇省南京市で建てた高層住宅(2024年7月26日) Photo by CFOTO/Sipa USA

<過剰債務、過剰投資、建物完成前に販売するプレセールによる利益先食いの負のスパイラルが止まらない>

中国の不動産業界の「寡占的な状況」が市場危機の大きな引き金になったと、ミシガン大学の新研究が指摘している。低迷前の2018年、中国では不動産開発業者の上位5社が、国内の住宅生産全体の30%を占めていた。アメリカの同様のシェアは13%だ。

中国の不動産部門は数十年にわたり爆発的な経済成長の原動力となってきた。しかし、リスクの高い投資、過剰な借り入れ、過剰な建設が続き、住宅市場のバブル崩壊を警戒した政府が20年に借り入れを制限する新たなルールを導入。不動産部門の崩壊が始まった。


21年12月に国内第2位の不動産開発業者、中国恒大集団が債務不履行に陥ると、危機は住宅市場全体に広がり、複数の企業が破綻して未完成の住宅が残された。23年10月には最大手の碧桂園(カントリーガーデン)も債務不履行と認定された。

現在も進行中の危機は、中国で2000年代初頭以降、少数のコングロマリットに力を集中させた住宅生産モデルの欠陥を露呈している。中国では土地は国が所有しており、使用権が競売を経て売買される。落札できるのは十分な資金を持つ大手の開発業者ばかりだ。

さらに、物件の完成前に販売するプレセールは、購入者の頭金や住宅ローンの債権が開発中に開発業者に移り、それを運転資金に回せる。プレセールはリスクを伴うため、中国の住宅購入者は実績のある大手業者を好むと、ミシガン大学の調査は指摘する。

大手開発業者は全国に拡大し、需要に合わない場所でも過剰に建設してきた。ミシガン大学のラン・トン教授(都市・地域計画学)は言う。「不動産業界の集中は国民経済の課題を悪化させ、地域経済にも悪影響をもたらしている」

ニューズウィーク日本版 高市早苗研究
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年11月4日/11日号(10月28日発売)は「高市早苗研究」特集。課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら



あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

米BofA、利益率16─18%に 投資家に中期目標

ワールド

トランプ関税の合憲性、米最高裁が口頭弁論開始 結果

ビジネス

FRB現行政策「過度に引き締め的」、景気にリスク=

ワールド

米、ICBM「ミニットマン3」発射実験実施 ロシア
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 2
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 3
    カナダ、インドからの留学申請74%を却下...大幅上昇の理由とは?
  • 4
    もはや大卒に何の意味が? 借金して大学を出ても「商…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    NY市長に「社会主義」候補当選、マムダニ・ショック…
  • 7
    若いホホジロザメを捕食する「シャークハンター」シ…
  • 8
    「白人に見えない」と言われ続けた白人女性...外見と…
  • 9
    「なんだコイツ!」網戸の工事中に「まさかの巨大生…
  • 10
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎の存在」がSNSで話題に、その正体とは?
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 6
    9歳女児が行方不明...失踪直前、防犯カメラに映った…
  • 7
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 8
    「日本のあの観光地」が世界2位...エクスペディア「…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    だまされやすい詐欺メールTOP3を専門家が解説
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 6
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 7
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中