最新記事
EV

EUの「中国EVへの関税」が気候変動にもEU市民にも「大ダメージ」な理由

MISGUIDED EV TARIFFS

2024年7月23日(火)12時09分
ダニエル・グロー(欧州政策研究センター研究部長)

ほかに輸入先がないならダメージは大きな懸念にならない。だが中国はEUにとって最重要のEV輸入先でありながら、輸入台数の割合は全体の50%を下回る。

昨年EUは中国製EVの「急増」にいら立ち、補助金の実態調査を開始した。だが実際には日本や韓国からの輸入が増え、輸入台数における中国のシェアは22年よりも減った。


あいにくWTOには補助金相殺関税を禁じる規則がない。環境に配慮したグリーン製品を、補助金相殺関税の対象から除外する権限もない。

この手の貿易摩擦は今に始まった話ではない。EUはアメリカのボーイングに対する補助金に、アメリカはEUのエアバスに対する補助金に何十年も苦情を申し立てた末、航空機産業を補助する互いの権利を尊重することに同意した。

気候変動と本気で戦うと主張するのはEUも中国も同じ。ならばEVについて、両者は同様の合意を目指すべきだ。

©Project Syndicate


240305P15P14_NW_Daniel_Gros.jpgダニエル・グロー
DANIEL GROS
ドイツ出身の経済学者。IMFのアドバイザーなどを経て、現在はシンクタンク欧州政策研究センター研究部長。主な研究テーマはEUの経済政策で、欧州議会への助言も行う。

ニューズウィーク日本版 コメ高騰の真犯人
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月24日号(6月17日発売)は「コメ高騰の真犯人」特集。なぜコメの価格は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

イラン最高指導者、米が攻撃すれば「取り返しのつかな

ワールド

ガザで30人死亡、住民絶望「私たちは忘れ去られよう

ワールド

イランの遠心分離機製造施設2カ所に被害=IAEA

ビジネス

ECB、「柔軟な」アプローチ維持 中東情勢と米通商
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタ…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 8
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?.…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中