最新記事
政策提言

米中貿易戦争「対中投資制限はアメリカの自縄自縛に」米中両政府への提言

THE US CAN’T WIN THIS TRADE WAR

2024年5月27日(月)16時00分
徐奇渊(シュイ・チーユアン、中国社会科学院世界政治経済研究所)

こうした資本流出は、中国とアメリカの金利差だけでは説明できない。資本の流出を招くのは、むしろ非経済的な要因だ。それには中国政府による不動産業界への締め付けなども含まれる。

加えて、最近は米中間の緊張が高まっているため、アメリカ政府は対中投資を抑制するような政策を採用している。

アメリカ議会も中国への投資をさらに制限する法案を検討している。こうしたことが相まって中国から逃げ出す資本が増え、結果として人民元の過小評価も一段と進む。

今は米中関係の先行きを見通せない状況だ。この状況が続く限り、人民元の為替レートは大幅に過小評価されたままで推移するだろう。そうなると、イエレンの不満を解消することも一段と難しくなる。

言うまでもないが、こうした政治的要因は中国経済におけるサービス部門の発展を遅らせ、その構造改革の妨げともなる。

そうであれば、なすべきことは明らかだ。双方の利益のために、中国政府は自国の非経済的措置の影響を評価する一貫した仕組みを考案すべきであり、アメリカ側は対中投資抑制の政策を見直すべきだ。

©Project Syndicate

newsweekjp_20240527042339.jpg徐奇渊(シュイ・チーユアン)
QIYUAN XU
中国・東北師範大学で博士号取得後、日本の一橋大学商学研究科客員研究員などを歴任。現在は中国社会科学院世界経済研究所の経済発展研究室で主任研究員を務める。

ニューズウィーク日本版 台湾有事 そのとき世界は、日本は
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年8月26日号(8月19日発売)は「台湾有事 そのとき世界は、日本は」特集。中国の圧力とアメリカの「変心」に強まる台湾の危機感。東アジア最大のリスクを考える

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ビジネス

インタビュー:円安是正へ日銀利上げ必要、財政規律も

ビジネス

S&P、米信用格付けを据え置き 「関税収入が財政赤

ビジネス

BHP、鉄鉱石安で年間利益5年ぶり低水準 配当好感

ビジネス

タイ、外国人観光客向けに仮想通貨・バーツ決済の試験
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
特集:台湾有事 そのとき世界は、日本は
2025年8月26日号(8/19発売)

中国の圧力とアメリカの「変心」に危機感。東アジア最大のリスクを考える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに感染、最悪の場合死亡も
  • 2
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    【クイズ】2028年に完成予定...「世界で最も高いビル…
  • 5
    AIはもう「限界」なのか?――巨額投資の8割が失敗する…
  • 6
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 7
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 8
    アラスカ首脳会談は「国辱」、トランプはまたプーチ…
  • 9
    「これからはインドだ!」は本当か?日本企業が知っ…
  • 10
    広大な駐車場が一面、墓場に...ヨーロッパの山火事、…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 5
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 6
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 7
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 8
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 9
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 10
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中