最新記事
ビジネス

「給料が低いので辞めます」は7~8%!「低い」の具体的不満には実は2種類ある

2024年5月14日(火)18時30分
西田周平 ※経営ノウハウの泉より転載

あがってきた言葉をそのまま受け止めて判断するのではなく、その背景・意図・文脈を正しく把握するための確認の場として、「対話の時間」を設けることは重要です。

■労働条件面について、伝え方は具体的に

また、給与や役職など目に見える労働条件面について、安易に「上げる」「変える」と伝えずに、本人の捉えかたや、他者への影響、社内全体への見え方など、幅広く捉え判断していくことが必要です。

「言った」「言わない」でトラブルになるケースもありますが、契約は口頭で伝えたことであっても成り立つ場合があるので注意が必要です。

とくに伝える側は「場合によっては給与を上げることも考えてよいけれども......」と幅を持たせた言い方をしたとしても、相談する側には「場合によっては」という幅が受け止められず、「給与を上げることを考えると言ってくれた」と受け止めてしまうこともあります。

先々に期待する役割(○○業務を担えるようになって半年が経過した場合など)や、分かりやすい条件(チームメンバーの離職を一年間抑えることができた場合など)を明確に示し、その内容を当人にも理解させた上で、話を進めるようにしましょう。

冒頭で紹介したケースのように、「その人だけに特別対応をしたことが、他のメンバーにも伝わってしまい、社内の雰囲気が悪くなった」ということも起こりえます。「この件は、あなただけに対応することだから、他の社員へは言わないように」と念押しをするとしても、それを義務として課すことは難しいでしょう。

まとめ

本記事では「給与を理由に辞めてしまう社員」の対応法について解説しました。「給与が低いから辞めたい」と退職届が提出された場合、その言葉をまっすぐに受け止めるだけでなく、背景や意図を確認することが重要です。

また、「給与を上げる」と伝える際には、齟齬が起きないよう具体的な条件や役割を示すことが必要でしょう。人材不足の中、持続可能な経営をするためにも、事態に直面した際は以下の要点をおさえた上で、対応していきましょう。

・まずは話を聴く場を持ち、背景・経緯・意図を深掘りして把握する
・その上で会社としての判断を示す
・気持ちを訴えてきたこと自体に意味があると受け止め、その後のキャリア支援や業務管理を通じて密にフォローしていく

また、給与を理由とした退職希望者が続出している場合は、根本的な解決を図る必要があります。

まず、経営者は目をそらさず現状を認識しなければなりません。場合によっては外部のアドバイスも受けながら、組織改革を速やかに検討したほうがよいでしょう。その際、社員に向かって方針を発信していくことも大切です。

・同業他社の給与をリサーチのうえ新たな給与水準を検討する
・給与制度や評価制度を見直し、公平感のある制度を再構築する


[執筆者]
西田周平
有限会社人事・労務チーフ人事コンサルタント
日本大学法学部卒業後、食品メーカーを経て現職。従業員が500名を超える会社から数名の会社まで幅広い企業のES向上型人事制度作成に数多く携わるほか、多くの労働基準監督署の是正勧告対応などの労務トラブルに対応し、その経験からリスク管理に長けた就業規則を作成するなど、中小企業の人事・労務に精通している。最近は、執筆や講演も精力的に行っている。

※当記事は「経営ノウハウの泉」の提供記事です
keieiknowhow_logo200.jpg

ニューズウィーク日本版 コメ高騰の真犯人
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年6月24日号(6月17日発売)は「コメ高騰の真犯人」特集。なぜコメの価格は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

アングル:欧州で増加する学校の銃乱射事件、「米国特

ビジネス

豪サントス、アブダビ国営石油主導連合が買収提案 1

ワールド

韓国、第2次補正予算案を19日に閣議上程へ 景気支

ワールド

米の日鉄投資計画承認、日米の経済関係強化につながる
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 7
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中