最新記事
経済

「読者が選ぶビジネス書グランプリ」第1位に、「お金には価値がない」と訴える本が選ばれたワケ

2024年4月9日(火)17時17分
flier編集部

都会では地域社会や助け合いがなくなって、生きづらさを感じる人が増えています。本書の主人公の優斗は地方に住んで地域社会に存在しています。だから彼は身の回りと助け合って生きている人たちの存在を感じながら生きています。

一方、投資銀行で働いている七海は地域社会に属していません。彼女のキャラクターは2つあって、1つは「金融に詳しい人」、もう1つは「地域社会に存在しない人」です。地域社会にいない彼女が他者視点で社会を見るためには、愛、つまり人を愛することが必要になってくるんです。

──たしかに、お金は愛とつながることもできますし、一方でお金があればなんでも買えるため、孤立して生きることもできますね。

自分のそばには自分のことを愛してくれる、いつも協力的な人たちがいます。そのすぐ外側には「仲間」と呼ばれる人たち。彼らは目的が共有できると協力してくれますが、あまりに利己的だと協力してくれなくなってしまう。そのさらに外側にいる人たちに手伝ってもらおうとするときは、お金を使って動いてもらうんです。

僕は金融教育やキャリア教育の講演に呼ばれて学校に足を運ぶときは、「将来どういう仕事がしたいですか?」と質問するんですけど、「年収の高い仕事」と返ってくることが多いです。「社会のために働く」という学生はすごく少ないですね。

なぜ「年収の高い仕事」を求めてしまうのか。それは、「社会」がすごく遠い世界のものだと感じているからだと思っています。別の言い方をすると、身近な社会を感じられなくなっている。

たとえば「単価の高い寿司屋でもうけたい」という目的で寿司屋を始めても、友達は食べに行かないでしょう。でも「地域の人たちにおいしいお寿司を食べてもらいたい」という目的であれば、資金提供したり、応援する人が現れるわけです。

世界っていうのは、まず愛する人や仲間たちがいて、その外側に貨幣経済があります。だとしたら、まず仲間を増やすことを考えたほうが生きやすいですよ。だから「社会のために働いた方がいいよ」いう話をするんです。

あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

ゼレンスキー氏、ロシアが和平努力拒否なら米に長距離

ビジネス

ナスダックが取引時間延長へ申請、世界的な需要増に照

ビジネス

テスラ、ロボタクシー無人走行試験 株価1年ぶり高値

ワールド

インド、メキシコと貿易協定目指す 来年関税引き上げ
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジアの宝石」の終焉
  • 4
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    アダルトコンテンツ制作の疑い...英女性がインドネシ…
  • 7
    「なぜ便器に?」62歳の女性が真夜中のトイレで見つ…
  • 8
    「職場での閲覧には注意」一糸まとわぬ姿で鼠蹊部(…
  • 9
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出…
  • 10
    トランプが日中の「喧嘩」に口を挟まないもっともな…
  • 1
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 2
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の脅威」と明記
  • 3
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 4
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 5
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 6
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 7
    中国軍機の「レーダー照射」は敵対的と、元イタリア…
  • 8
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 9
    人手不足で広がり始めた、非正規から正規雇用へのキ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 3
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 4
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 5
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 6
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 7
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 8
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 9
    インド国産戦闘機に一体何が? ドバイ航空ショーで…
  • 10
    ポルノ依存症になるメカニズムが判明! 絶対やって…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中