大谷出場のMLBソウルシリーズ開催は韓国企業COUPANGによる「仁義なき韓中ネット通販戦争」の恩恵?
TEMUなど中国からの越境ECが急増
そしてもう一つ大きな理由として挙げられるのはTEMU、AliExpressなどの中国系の越境ECサービスの韓国国内での成長がある。
3月20日、韓国関税は2023年、海外から来たネット通販は1億3144万3000件で36.7%増加し、さらに中国から来たネット通販の件数は8,881万5000件で、前年(5215万4000件)より70.3%増えたと発表した。コロナ禍が収まり越境ECが再び活発化したなかで、中国からの越境ECがさらに急増しているわけだ。
なかでも日本でもネット広告などを大々的に展開して話題を呼んだ中国のネット通販企業TEMUは、日本と同じ2023年7月に韓国でもサービスを開始した。半年で581万人の利用者を獲得し、韓国国内の総合ネット通販のシェア第4位に躍進している。
また、2018年に韓国市場に先行進出したアリババ傘下のAliExpressは、2023年10月に韓国商品専門館であるK-ベニュ−を開設して韓国の販売業者を集め、取り扱い商品に加工·生鮮食品を追加。これにより利用者数も急激に増え、アプリの月間利用者数は818万人と前年同期比(355万人)230%もの増加となり、総合ネット通販のシェアで2位まで駆け上がり、今後クーパン(3010万人)追撃に狙いを定めてくることが予想されている。
イチゴ1パック100円で攻勢かける中国
事実、AliExpressは最近、超低価格商品を次々と発売し、顧客の獲得に乗り出している。イチゴ1パック1000ウォン(約114円)、卵2パックで1000ウォンといった具合だ。 また、親会社であるアリババグループは、ソウル近隣に大型物流センターを建設するなど、韓国に3年間約1兆4000億ウォン(約1,600億円)を投資する計画だという。
これに対抗してクーパンをはじめとした国内ネット通販企業は直購·逆直購と呼ばれる越境EC事業強化で対抗しようとしている。クーパンは最近「ロケット直購」と呼ばれる海外のネット通販からのお取り寄せサービスの対象地域をアメリカ、中国、香港に続き日本にも拡大した。日本旅行がブームとなっている韓国では、消費者の間で楽天やアマゾンといった日本のネット通販に対する需要が急速に高まっているが、韓国国内からこれらの日本のネット通販を利用できる越境ECサービスの選択肢が少ないという。「ロケット直購」の強みは無料配送で、「ワウメンバーシップ」会員は1個だけの注文でも無料配送を受けることができる。
韓国のネット通販業界関係者は「AliExpressやTEMUの低価格襲撃に国内ネット通販業界の緊張感が高まっている」として「韓国企業による越境EC活性化が対策に挙げられ業界の動きも慌ただしくなっている」と話している。
大谷や山本由伸らの熱戦が繰り広げられる高尺スカイドームの外では、MLBをソウルに招聘したクーパンをはじめとした韓中ネット通販企業による仁義なき戦いが繰り広げられているのだ。