最新記事
日銀

マイナス金利3月解除も、集中回答日に賃上げ4%超えなら=桜井元日銀審議委員

2024年2月26日(月)10時43分
ロイター

桜井真・元日銀審議委員はロイターのインタビューで、日銀が3月の金融政策決定会合でマイナス金利を解除する可能性に言及し、春闘の集中回答日に大企業の賃上げ率が4%を超えれば「十分にある」と述べた。写真は2016年4月、都内の日銀で撮影(2024年 ロイター/Yuya Shino)

桜井真・元日銀審議委員はロイターのインタビューで、日銀が3月の金融政策決定会合でマイナス金利を解除する可能性に言及し、春闘の集中回答日に大企業の賃上げ率が4%を超えれば「十分にある」と述べた。解除後は3―4年かけ長期金利が最大2.0%に上昇するような政策運営になるのではないかと予想した。

桜井氏は3月の金融政策決定会合に向けて、最大の焦点は賃上げ率が春闘の第1次集計で昨年をどれだけ超えられるかだと述べた。昨年の最終集計3.58%に対して「仮に4.0%を超えてくると、マイナス金利を解除する可能性が十分にある」と語った。ただ、マイナス金利解除が3月か4月かは「五分五分」とも述べた。

 

今年の集中回答日は3月13日。日銀はその5日後に2日間の日程で金融政策決定会合を開く。今年は昨年以上に春闘への期待が高まっており、国内で雇用を多く抱える自動車大手のホンダとマツダは組合の要求にすでに満額で回答した。 こうした中で日銀は金融政策の正常化に向けた地ならしとも取れる情報発信を強め、植田和男総裁は1月の金融政策決定会合後の会見で「大手企業を中心に経営者から賃上げに前向きな発言もみられている」と語った。2月22日の衆議院予算委員会では、「デフレではなくインフレの状態にある」と踏み込んだ。 桜井氏は、日銀は正常化に向けて100%準備を終えているとの見方を示し、「問題は最終的に植田総裁がどこで決断するかだ」と語った。

2023年7ー9月期に続いて、10―12月期も実質国内総生産(GDP)はマイナス成長になったが「実態はほとんど横ばいと言っていいのではないか」とし、「正常化のスタートに影響を与えない」と述べた。

ロイターがエコノミスト対象に実施した調査によると、市場関係者の多くは4月のマイナス金利解除を予想。3月の可能性も排除しておらず、市場は正常化を折り込み始めている。焦点は解除後の利上げに移りつつあるが、桜井氏は日銀の公式見解通り当面緩和的な政策が続くとみる。 日銀の政策スタンスを測る上で、景気に対して引き締め的でも緩和的でもない「中立金利」がどの程度なのかが重要になるが、桜井氏は「実質中立金利は潜在成長率にほぼ近い」と説明。推計手法やデータによっても値が異なるため、あくまで「目安」と断った上で、潜在成長率は0.5―1.0%の間だと話した。 「名目中立金利」は潜在成長率に物価目標2%を足した2.5―3.0%程度とし、日銀は名目中立金利より1%ポイント低い水準を上限に「3―4年かけて、10年金利が1.5―2.0%程度まで上昇するような政策運営をするのではないか」と語った。 一方で、桜井氏は短期金利はマイナス金利解除後1年―1年半で0.5%まで上昇する可能性があるとみている。短期の方が日々の取引が厚い分、上昇スピードが速いという。短期金利について「自然に上がっていくなら(日銀は)大きな買い入れはしないで、0.2%、0.3%と上昇を許容していくのではないか」と述べた。 桜井氏は、海外経済の安定や日本経済がマイナス成長になっていないことがこうした金利予想の前提条件になるとも指摘した。

このインタビューは22日に実施しました。

(和田崇彦、木原麗花 編集:久保信博)



[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2024トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

20240730issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年7月30日号(7月23日発売)は「トランプ暗殺未遂」特集。前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

アングル:トランプ氏なら強制送還急拡大か、AI技術

ビジネス

アングル:ノンアル市場で「金メダル」、コロナビール

ビジネス

為替に関する既存のコミットメントを再確認=G20で

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型ハイテク株に買い戻し 利下
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ暗殺未遂
特集:トランプ暗殺未遂
2024年7月30日号(7/23発売)

前アメリカ大統領をかすめた銃弾が11月の大統領選挙と次の世界秩序に与えた衝撃

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理由【勉強法】
  • 2
    BTS・BLACKPINK不在でK-POPは冬の時代へ? アルバム販売が失速、株価半落の大手事務所も
  • 3
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子どもの楽しい遊びアイデア5選
  • 4
    キャサリン妃の「目が泳ぐ」...ジル・バイデン大統領…
  • 5
    地球上の点で発生したCO2が、束になり成長して気象に…
  • 6
    カマラ・ハリスがトランプにとって手ごわい敵である5…
  • 7
    トランプ再選で円高は進むか?
  • 8
    拡散中のハリス副大統領「ぎこちないスピーチ映像」…
  • 9
    中国の「オーバーツーリズム」は桁違い...「万里の長…
  • 10
    「轟く爆音」と立ち上る黒煙...ロシア大規模製油所に…
  • 1
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラニアにキス「避けられる」瞬間 直前には手を取り合う姿も
  • 2
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを入れてしまった母親の後悔 「息子は毎晩お風呂で...」
  • 3
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」、今も生きている可能性
  • 4
    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…
  • 5
    「習慣化の鬼」の朝日新聞記者が独学を続けられる理…
  • 6
    【夏休み】お金を使わないのに、時間をつぶせる! 子…
  • 7
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 8
    「失った戦車は3000台超」ロシアの戦車枯渇、旧ソ連…
  • 9
    「宇宙で最もひどい場所」はここ
  • 10
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った…
  • 1
    中国を捨てる富裕層が世界一で過去最多、3位はインド、意外な2位は?
  • 2
    ウクライナ南部ヘルソン、「ロシア軍陣地」を襲った猛烈な「森林火災」の炎...逃げ惑う兵士たちの映像
  • 3
    ウクライナ水上ドローン、ロシア国内の「黒海艦隊」基地に突撃...猛烈な「迎撃」受ける緊迫「海戦」映像
  • 4
    ブータン国王一家のモンゴル休暇が「私服姿で珍しい…
  • 5
    正式指名されたトランプでも...カメラが捉えた妻メラ…
  • 6
    韓国が「佐渡の金山」の世界遺産登録に騒がない訳
  • 7
    すぐ消えると思ってた...「遊び」で子供にタトゥーを…
  • 8
    月に置き去りにされた数千匹の最強生物「クマムシ」…
  • 9
    メーガン妃が「王妃」として描かれる...波紋を呼ぶ「…
  • 10
    「どちらが王妃?」...カミラ王妃の妹が「そっくり過…
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中