最新記事
日本経済

名門ホテル幹部「中国人団体客に来られても困る」 日本の抱える「処理水」よりも深刻な問題とは

2023年10月25日(水)11時35分
星出遼平(東洋経済 記者) *東洋経済オンラインからの転載
横綱とんかつ どすこい田中に並ぶ訪日外国人

話題のレストラン「横綱とんかつ どすこい田中」も並んでいる訪日外国人は欧米からの観光客だ。Issei Kato - Reuters

コロナ禍前、日本各地で「爆買い」をしていた中国人観光客。その姿がいまだにほとんど見られない。

9月20日に日本政府観光局(JNTO)が発表したデータによると、8月に日本を訪れた中国人の数は36.4万人。100万人いたコロナ禍前の3~4割にとどまっている(2019年8月比)。韓国人やアメリカ人はコロナ禍前を上回る数字となっており、中国人観光客の回復の遅れは顕著だ。

「処理水問題」が訪日旅行に影響

日本への中国人団体旅行は今年8月10日、約3年半ぶりに解禁されている。円安も進行し訪日旅行の「お得感」も高まっている。

回復の遅れに影響しているのは、ALPS処理水の海洋放出による中国側の反発だ。

足元ではようやく落ち着いてきたとはいえ、中国の現地報道では、「日本福島核汚染水の第1回海洋放出が終了、現地はどうなっているのか」と題した記事が9月13日付で掲載。「(日本政府には)問題の本質を理解したうえで現実的な解決策が求められている」(中国青年網)と述べている。

2019年には3188万人のインバウンド客が日本を訪れていたが、そのうち30%が中国本土からの観光客だった。日本の観光市場にとって「お得意様」だった中国人観光客の消失を、ホテル側はどう思っているのだろうか。

意外にも、ホテル側の受け止めはいたって冷静だ。

「受け入れ態勢ができていないので、いま中国人団体観光客に来られても困る」と、名門ホテルの幹部は胸をなでおろす。他のホテルも異口同音に「中国人客のキャンセルなどによる影響はほとんどない」と語る。

実際、インバウンドを集客できる都内のホテルの経営状況はコロナから急回復している。藤田観光が運営する1000室以上の大型ホテル「新宿ワシントンホテル」の客室単価・稼働率は現在、コロナ禍前を上回っている。

中国本土からの需要は回復していないものの、家族やグループでの宿泊が多いほかの国からのインバウンド客が増えたことで、宿泊人数が増加し客室単価の上昇につながっているのだ。

2019年と23年の訪日外国人客の内訳

建築
顧客の経営課題に寄り添う──「経営のプロ」の視点を持つ「異色」の建築設計事務所
あわせて読みたい
ニュース速報

ワールド

トランプ氏のモスクワ爆撃発言報道、ロシア大統領府「

ワールド

ロシアが無人機728機でウクライナ攻撃、米の兵器追

ワールド

PKK指導者、対トルコ武装闘争終結宣言 拘束以来初

ビジネス

英中銀、高リスク住宅ローンの規制緩和 融資拡大容認
あわせて読みたい
MAGAZINE
特集:大森元貴「言葉の力」
特集:大森元貴「言葉の力」
2025年7月15日号(7/ 8発売)

時代を映すアーティスト・大森元貴の「言葉の力」の源泉にロングインタビューで迫る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、ネットが感動の渦
  • 2
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...APB「乗っ取り」騒動、日本に欠けていたものは?
  • 3
    「ヒラリーに似すぎ」なトランプ像...ディズニー・ワールドの大統領人形が遂に「作り直し」に、比較写真にSNS爆笑
  • 4
    トランプ関税と財政の無茶ぶりに投資家もうんざり、…
  • 5
    犯罪者に狙われる家の「共通点」とは? 広域強盗事…
  • 6
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 7
    名古屋が中国からのフェンタニル密輸の中継拠点に?…
  • 8
    自由都市・香港から抗議の声が消えた...入港した中国…
  • 9
    人種から体型、言語まで...実は『ハリー・ポッター』…
  • 10
    「けしからん」の応酬が参政党躍進の主因に? 既成…
  • 1
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...父親も飛び込み大惨事に、一体何が起きたのか?
  • 2
    「やらかした顔」がすべてを物語る...反省中のワンコに1400万人が注目
  • 3
    後ろの川に...婚約成立シーンを記録したカップルの幸せ映像に「それどころじゃない光景」が映り込んでしまう
  • 4
    「弟ができた!」ゴールデンレトリバーの初対面に、…
  • 5
    日本企業の「夢の電池」技術を中国スパイが流出...AP…
  • 6
    職場でのいじめ・パワハラで自死に追いやられた21歳…
  • 7
    【クイズ】「宗教を捨てる人」が最も多い宗教はどれ?
  • 8
    為末大×TAKUMI──2人のプロが語る「スポーツとお金」 …
  • 9
    シャーロット王女の「ロイヤル・ボス」ぶりが話題に..…
  • 10
    「本物の強さは、股関節と脚に宿る」...伝説の「元囚…
  • 1
    「コーヒーを吹き出すかと...」ディズニーランドの朝食が「高額すぎる」とSNSで大炎上、その「衝撃の値段」とは?
  • 2
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 3
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 4
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事…
  • 5
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 6
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 7
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 8
    燃え盛るロシアの「黒海艦隊」...ウクライナの攻撃で…
  • 9
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 10
    イランを奇襲した米B2ステルス機の謎...搭乗した専門…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中