最新記事

仮想通貨

ビットコイン法定通貨から1年 半値以下に暴落で夢破れたエルサルバドル

2022年9月12日(月)15時17分

ところが、ビットコイン価格の下落はエルサルバドルの財政リスクを高め、2023年と25年に期限を迎える16億ドルの国債は、償還資金の手当てが難航している。

国際通貨基金(IMF)はエルサルバドルに対し、金融、経済、法的な懸念を理由にビットコインの法定通貨化の見直しを求め、IMFとの融資交渉は複雑になっている。

普及が進まない事情

専門家によると、ビットコインの普及も進んでいない。

大統領府も財務省も、政府のビットコイン専用スマートフォンアプリ「チボ」の利用状況についての統計を公表していない。

だが、米国に拠点を置くNGO、全米経済研究所(NBER)の調査によると、チボをダウンロードした国民のうち、政府が利用促進のために無料配布した30ドル相当のビットコインを使った後も継続してアプリを利用したのは、わずか20%だった。

アプリのダウンロードの大部分は昨年に、具体的には同年9月に集中しており、今年は今までのところほとんどダウンロードが行われていないという。

理屈の上では、エルサルバドルのような発展途上国は現金に依存する状態が続き、銀行口座を持たない国民が多いため、仮想通貨貨導入の理想的な候補地だ。

しかし、4月のNBERのリポートによると、ユーザーは「ビットコインを理解しておらず、信頼せず、企業にも受け入れられていない上、ビットコインは非常に不安定で、高い手数料を伴う」ため、「取引の媒体として広く使用されていない」と指摘された。

エルサルバドルの法律は全ての企業に仮想通貨の受け入れを義務付けているが、1800世帯を対象にした調査によると、受け入れているのは20%に過ぎない。

首都・サンサルバドル中心部にあるイェスス・カセレスさん(47)の小さな時計店は、ビットコインの支払いを受け入れており、そのことを示す表示も出している。

だが、これまでにビットコインで支払いが行われたのはわずか2回。「1回は3ドル、もう1回が5ドルで、合計8ドル。それ以来は皆無だ」と話す。

政府はまた、海外で働くエルサルバドル国民に対し、チボや民間の仮想通貨ウォレットを使い、手数料なしに本国に送金することを奨励してきた。本国送金はエルサルバドルの国内総生産(GDP)の26%を占め、この比率は世界最高水準だ。

しかし、中央銀行の統計によると、昨年9月から今年6月の間の本国送金は約64億ドルで、このうちデジタル仮想通貨ウォレット経由は2%未満だった。

政府はビットコインの使用状況と同様に、ビットコインシティー構想について、詳細をほとんど公表していない。だが、ブケレ氏が建設費を賄うために計画した「ビットコイン債」はビットコインの暴落を受けて発行が延期され、構想は見通しがますます不透明になっているようだ。

コンチャグア火山と太平洋岸のフォンセカ湾に挟まれた建設予定地の住民は、国民の大多数にとって恩恵はないと感じている。

コンチャグアに暮らして30年の漁師で農民のホセ・フローレスさん(48)は「貧しい私たちには何のメリットもない」と嘆息した。

(Nelson Renteria記者)

[ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2022トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

ジェファーソンFRB副議長、26年見通し「慎重なが

ビジネス

SF連銀総裁「米経済は不安定」、雇用情勢の急変リス

ワールド

12年のリビア米領事館襲撃の容疑者を逮捕=司法長官

ビジネス

米国株式市場・午前=ダウ一時1000ドル高、史上初
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプの帝国
特集:トランプの帝国
2026年2月10日号(2/ 3発売)

南北アメリカの完全支配を狙うトランプの戦略は中国を利し、世界の経済勢力図を完全に塗り替える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近したイラン製ドローンを撃墜
  • 2
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入った「最強ライバル」の名前
  • 3
    がんの約4割は、日々の取り組みで「予防可能」...予防のために、絶対にしてはいけないこととは?
  • 4
    韓国ダークツーリズムが変わる 日本統治時代から「南…
  • 5
    地球の近くで「第2の地球」が発見されたかも! その…
  • 6
    イースター島の先住民から資源を略奪、島を「生きた…
  • 7
    鉱物資源の安定供給を守るために必要なことは「中国…
  • 8
    「右足全体が食われた」...突如ビーチに現れたサメが…
  • 9
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 10
    日経平均5万4000円台でも東京ディズニー株は低迷...…
  • 1
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 2
    日本への威圧を強める中国...「レアアース依存」から脱却する道筋
  • 3
    致死率は最大75%のニパウイルスが、世界規模で感染拡大する可能性は? 感染症の専門家の見解
  • 4
    「出禁」も覚悟? ディズニーランドで緊急停止した乗…
  • 5
    米戦闘機、空母エイブラハム・リンカーンに接近した…
  • 6
    グラフが示す「米国人のトランプ離れ」の実態...最新…
  • 7
    高市首相の発言は正しかった...「対中圧力」と「揺れ…
  • 8
    エプスタインが政権中枢の情報をプーチンに流してい…
  • 9
    関節が弱ると人生も鈍る...健康長寿は「自重筋トレ」…
  • 10
    エヌビディア「一強時代」がついに終焉?割って入っ…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    【クイズ】致死率50~75%...インドで感染拡大「ニパウイルス」の感染源となる動物は?
  • 3
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した──台湾高官が分析
  • 4
    高市積極財政にアメリカが慌てる理由
  • 5
    セーターが消えた冬 ── 暖かさの主戦場が「インナー」…
  • 6
    海上自衛隊が水中無人機(UUV)を導入 中国の海軍拡…
  • 7
    防衛省が「新SSM」の映像を公開、ノルウェー・コング…
  • 8
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 9
    中国で大規模な金鉱脈の発見が相次ぐ...埋蔵量は世界…
  • 10
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中