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ビットコイン法定通貨から1年 半値以下に暴落で夢破れたエルサルバドル

2022年9月12日(月)15時17分
「ビットコイン使用可能」と書かれたお店のサイン

エルサルバドルは昨年9月7日に世界で初めてビットコインを法定通貨に採用した。しかし戦略都市「ビットコインシティー」の建設予定地は深いジャングルに覆われたままだ。写真は「ビットコイン使用可能」と書かれたサイン。サンサルバドルで昨年9月撮影(2022年 ロイター/Jose Cabezas)

中南米で最も貧しい国の1つであるエルサルバドルは、昨年9月7日に世界で初めて暗号資産(仮想通貨)のビットコインを法定通貨に採用した。ブケレ大統領が同年11月にビットコインを核とする戦略都市「ビットコインシティー」の建設計画を打ち出したが、法定通貨化から1年を経過した今、建設予定地は深いジャングルに覆われたままだ。

価格下落が痛撃

ブケレ氏の当時の説明では、ビットコインシティーは仮想通貨の投資家と採掘者(マイナー)への課税を免除し、空港や居住・商業地区、上空から見るとビットコインのデザインを模したことが分かる商業施設などを備える構想だった。

つばを後ろ向きにした野球帽をかぶり、全身のファッションを白でまとめたブケレ氏は熱狂的なビットコイン支持者数百人を前に「ここに投資して、好きなだけ儲けよう」とぶちあげた。2021年11月のことだった。

しかし、ロイターの記者が最近、東部のコンチャグア火山に近い建設予定地を訪れたところ、重機も作業員も資材も見当たらず、そのような商業施設の建設が進んでいる様子はなかった。

ビットコインの暴落により、建設計画はむしろ多くの国民にとって愚行の象徴となっている。

フランシスコ・ガビディア大学科学・技術・イノベーション研究所のディレクター、オスカーピカルド氏は「この実験は非常にリスクが高く、貧しい国にとっては危険過ぎる」と法定通貨化を批判。「(ビットコインは)非常に投機的で変動性の高い金融資産であることが分かってきた」と述べている。

問題のほとんどは、ビットコインをはじめとする仮想通貨が値下がりし、投資家からそっぽを向かれたことに起因している。

エルサルバドルがビットコインを法定通貨に採用した時、ビットコインは4万7000ドルに迫っていた。1年後の今は価値が半分以下に沈み、6日には1万9770ドル近辺で取引された。

ブケレ政権はこの記事へのコメントを拒否した。だが、計画は長期的だと説明。ビットコイン政策は投資を呼び込み、銀行の手数料をゼロに引き下げ、観光客を増やして、誰もが金融サービスにアクセスできるファイナンシャルインクルージョン(金融包摂)を促進したと意義を強調した。

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