最新記事

経営

なぜ失敗するのか? フリーアドレス、3つのメリットと3つのデメリット

2022年7月31日(日)16時00分
山口ヨシカズ ※経営ノウハウの泉より転載

■多様な働き方への対応

コロナ禍以降に普及した多様な働き方にも対応しやすいのも、フリーアドレスのメリットです。例えば、育休や介護などで在宅ワークをしている社員はオフィスに居る時間が極端に少なくなります。しかし、固定座席の場合、その社員の座席を撤去するわけにもいかず、ほとんど使われないままの座席が存在することになってしまいます。

一方、フリーアドレスにすると座席を必要な人が必要なときだけ使えます。全員分の座席は用意しなくてもいいので、スペースの有効利用にもなります。テレワークや短時間勤務、フレックスタイム制のような柔軟な働き方に対応しやすいのです。

中小企業経営者が知るべきフリーアドレスのデメリット

■全職種に一律の効果が期待できない

フリーアドレスには向かない職種があります。それは以下のような職種です。

・スペックの高いデバイスや大きなモニタを必要とする職種(デザイナー、エンジニアなど)
・業務中に固定電話が必要な職種(受付、受注管理など)
・一般社員よりも厳重なセキュリティが必要な職種(管理部門、情報システム、経理など)

これらの職種は固定座席のほうが良いでしょう。向いている部門と向かない部門がある場合は、一部の社員だけを固定座席にするような工夫も必要です。

■適切な運用ができないと業務効率が落ちる

フリーアドレスは適切な方法で実施しないと業務効率が落ちる場合があります。例えば以下のような理由からです。

・荷物をたくさん持ち込めないため、何回もロッカー室とオフィスを往復しないといけない
・社員のコミュニケーションが活性化して雑談が多くなるため、業務に集中できない
・新入社員が同じ部門のベテラン社員と接する機会が減り、OJTの妨げになる
・誰がどこにいるのかわかりにくく、人探しの時間が増える

これらのデメリットを解消するには、以下のような対策が必要でしょう。

・オフィス内にパーソナルロッカーを設置する
・集中できるブースを設置する
・OJTのためにグループごとのミーティングを増やす
・人がどこにいるかすぐにわかるツールを導入する

■社員のストレスになり得る

先述したようなフリーアドレスによる業務効率低下は、社員のストレスにもなり得ます。例えば、荷物をたくさん持ち込めないので、いちいちロッカーとの往復が発生します。仕事が捗っているときにロッカーとオフィスを往復しているとせっかく仕事に集中しているのに台無しになってしまいます。それに、他の人の雑談がうるさかったり、人を探すのに時間がかかったりするとそれだけでイライラしますね。

フリーアドレスを導入する場合は、導入して終わりではなく、社員のストレスが増えないようにしっかりと現場の声を聞いて対策をすることが重要です。また、座席をフリーにするだけではなく、休憩スペースやソファー席など従業員のストレスを癒やす空間もあるとよいでしょう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:屋台販売で稼ぐ中国の高級ホテル、デフレ下

ワールド

メラニア夫人、プーチン氏に書簡 子ども連れ去りに言

ワールド

米ロ首脳、ウクライナ安全保証を協議と伊首相 NAT

ワールド

ウクライナ支援とロシアへの圧力継続、欧州首脳が共同
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
特集:Newsweek Exclusive 昭和100年
2025年8月12日/2025年8月19日号(8/ 5発売)

現代日本に息づく戦争と復興と繁栄の時代を、ニューズウィークはこう伝えた

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に入る国はどこ?
  • 4
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大…
  • 5
    債務者救済かモラルハザードか 韓国50兆ウォン債務…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    「ゴッホ展 家族がつないだ画家の夢」(東京会場) …
  • 8
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 9
    「デカすぎる」「手のひらの半分以上...」新居で妊婦…
  • 10
    【クイズ】次のうち、「軍事力ランキング」で世界ト…
  • 1
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 2
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...「就学前後」に気を付けるべきポイント
  • 3
    頭部から「黒い触手のような角」が生えたウサギ、コロラド州で報告相次ぐ...衝撃的な写真の正体
  • 4
    「笑い声が止まらん...」証明写真でエイリアン化して…
  • 5
    「長女の苦しみ」は大人になってからも...心理学者が…
  • 6
    「触ったらどうなるか...」列車をストップさせ、乗客…
  • 7
    「何これ...」歯医者のX線写真で「鼻」に写り込んだ…
  • 8
    産油国イラクで、農家が太陽光発電パネルを続々導入…
  • 9
    【クイズ】次のうち、「海軍の規模」で世界トップ5に…
  • 10
    これぞ「天才の発想」...スーツケース片手に長い階段…
  • 1
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 2
    こんな症状が出たら「メンタル赤信号」...心療内科医が伝授、「働くための」心とカラダの守り方とは?
  • 3
    「自律神経を強化し、脂肪燃焼を促進する」子供も大人も大好きな5つの食べ物
  • 4
    デカすぎ...母親の骨盤を砕いて生まれてきた「超巨大…
  • 5
    デンマークの動物園、飼えなくなったペットの寄付を…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    山道で鉢合わせ、超至近距離に3頭...ハイイログマの…
  • 8
    将来ADHDを発症する「幼少期の兆候」が明らかに?...…
  • 9
    イラン人は原爆資料館で大泣きする...日本人が忘れた…
  • 10
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中