最新記事

エネルギー安全保障

プーチン、サハリン2で参院選前の岸田政権に揺さぶり エネルギーか制裁措置か、踏み絵に

2022年7月3日(日)13時09分
サハリン2プロジェクトのLNGプラントに立つ従業員

猛暑で電力不足に直面する日本が、石油・天然ガス開発事業「サハリン2」を巡るロシアの新たな方針に揺さぶられている。写真はユジノサハリンスク近郊のサハリン2プロジェクトのLNGプラントに立つ従業員。2006年10月撮影(2022年 ロイター/Sergei Karpukhin)

猛暑で電力不足に直面する日本が、石油・天然ガス開発事業「サハリン2」を巡るロシアの新たな方針に揺さぶられている。権益を維持するには改めてロシアに申請する必要があり、ウクライナ情勢を巡って西側諸国が結束する中、冬に一段と電力切迫する恐れがある日本にとっては踏み絵となりかねない。

ロシアの突然の方針が伝わった1日午前、日本の関係者は情報の確認に追われた。サハリン2をエネルギー安全保障上の重要な権益とみなす日本政府、実際に権益を持つ三井物産と三菱商事はいずれも大統領令の内容を確認中とコメントした。

ロシアのプーチン大統領は30日、サハリン2の権益などを引き継ぐ新たな事業体を設立する大統領令に署名した。国営ガス大手のガスプロムは権益を維持できる一方、他の出資者はロシア政府に対して1カ月以内に改めて権益の承認を申請する必要がある。認められれば権益を保有し続けられるとしている。詳しい条件は明らかになっていない。

折しも日本は猛暑続きで電力不足に直面している最中。経済界から「どうしてもっと早いアクションを取らなかったのか」(経済同友会の桜田謙悟代表幹事)と声が出るなど、電力の需給逼迫が7月10日の参議院選挙を前に社会問題化しつつあった。首相に近い政府関係者は「猛暑による電力逼迫、物価高による内閣支持率の低下、しかも参院選の投票直前というタイミングを狙って、ロシアは日本がどこまでG7(主要7カ国)と足並みを揃えられるのか試しに来ているのだろう」と分析する。

日本が輸入する液化天然ガス(LNG)の約9%がサハリン2からのもの。市場で調達するよりも安価なため、仮に権益をあきらめれば調達価格が上昇する。そもそもウクライナ危機で世界的にLNGが不足する中、代替できるかどうかも分からない。資源エネルギー庁の幹部は、「代替LNGを市場で調達すると数兆円の追加負担が発生する」と説明する。今年の冬は一段と電力需給が厳しくなる見込みで、「来年まで電力需給は綱渡り。冬はサハリン頼みだ」と、経産省幹部は言う。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

カナダとの新たな経済協定、関税含まれる必要=トラン

ビジネス

米国株式市場=反発、原油安でインフレ懸念緩和

ビジネス

NY外為市場=ドルが対円・スイスフランで上昇、中東

ワールド

中国主席、カザフ大統領と会談 貿易・投資で協力へ=
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:コメ高騰の真犯人
特集:コメ高騰の真犯人
2025年6月24日号(6/17発売)

なぜ米価は突然上がり、これからどうなるのか? コメ高騰の原因と「犯人」を探る

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロットが指摘する、墜落したインド航空機の問題点
  • 2
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 3
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 4
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 5
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 6
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 7
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    コメ高騰の犯人はJAや買い占めではなく...日本に根…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 7
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 8
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 9
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 10
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊の瞬間を捉えた「恐怖の映像」に広がる波紋
  • 4
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 5
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 6
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 7
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 8
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 9
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 10
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中