最新記事

株式市場

日本株の見通し──2022年内に日経平均3万円回復か

2022年6月13日(月)14時46分
井出 真吾(ニッセイ基礎研究所)

企業業績にとってはプラスかマイナスか metamorworks-iStock.

<問題の「インフレ」と「円安」は日本株にどう影響するか>

*この記事は、ニッセイ基礎研究所レポート(2022年5月9日付)からの転載です。

2022年前半の日本株市場は、米FRB(連邦準備制度理事会)の金融引き締め加速とロシアによるウクライナ侵攻を受けて波乱の展開となった。西側諸国によるロシアへの経済制裁が想定以上に厳しい内容であることが判明すると、3月8日には日経平均株価は一時25,000円割れを余儀なくされた。その後は急速な円安などを支えに3月末は27,821円まで回復したものの、1年前の2021年3月末(29,178円)と比べて1,357円低い水準だ。

今後の日本株の動向を占ううえで重要なカギは「インフレ」と「円安」だろう。まず、長引く高水準のインフレはFRBやECB(欧州中央銀行)、場合によっては日銀の金融政策にも影響しかねないだけでなく、日本企業の業績見通しを難しくさせている。

FRBは3月のFOMC(連邦公開市場委員会)で年内7回分(1回あたり0.25%相当)の利上げを示唆した。その後、パウエル議長などの要人発言を受けて、金融引き締めが加速されることも株式市場はほぼ織り込み済みだ。仮に5月と6月に0.5%ずつ利上げしたり同時期に量的縮小(QT)を開始したりしても、株式市場で大きな混乱は起きそうにない。

金融緩和は維持の方向

日銀は金融緩和維持の必要性を強調しているが、国内の消費者物価と世論の動向次第では日本政府から何かしらのインフレ対応を求める声が出るかもしれない。不透明要因ではあるが、その場合でも金融政策の大幅変更は想定されず、一時的なノイズ程度で済む可能性が高い。

nissai20220613125201.jpg

インフレや円安が企業業績に及ぼす影響を見通すのは難しい。原材料費や物流費などの高騰は間違いなく企業収益を圧迫するが、産業の川上と川下で企業物価の上昇率が大きく異なっていることからも、企業ごとに影響度合いが違う。一方、円安は一般的に輸出企業の採算を改善させるが、内需企業には輸入物価の上昇を通じて業績のマイナス要因として働くことが多い。

日経平均ベースではこれらプラス要因とマイナス要因の"綱引き"となる。まず為替相場の影響については図表1のとおり、過去は円安になるほど日経平均の1株あたり予想純利益(EPS)が増える傾向があった。直近は図の丸印の位置で、これから円安効果が反映されてEPSが増加すると想定される。単純に傾向線を当てはめるとEPSが2割ほど増える計算だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

米、台湾への武器売却承認 ハイマースなど過去最大の

ビジネス

今回会合での日銀利上げの可能性、高いと考えている=

ワールド

中国、「ベネズエラへの一方的圧力に反対」 外相が電

ワールド

中国、海南島で自由貿易実験開始 中堅国並み1130
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 7
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 8
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 9
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 10
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 5
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    自国で好き勝手していた「元独裁者」の哀れすぎる末…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中