最新記事

経済制裁

デフォルト目前のロシア対外債務 その可能性と影響まとめ

2022年3月16日(水)11時30分
ルーブル貨幣

ロシアは3月16日にドル建て国債2本の利払い期限を迎える。写真はルーブル貨幣。2018年10月撮影(2022年 ロイター/Maxim Shemetov)

ロシアは16日にドル建て国債2本の利払い期限を迎える。合計金額は1億1700万ドルで、ウクライナ侵攻を受けて欧米が大規模な経済制裁を発動し、ロシア側が対抗措置を講じて以降、初めての対外債務支払いとなる。

ロシア財務省は14日、これらユーロ債(母国市場以外の市場で発行される債券)の利払いを行うよう銀行に指示したと発表した。ただ、実際に支払われるか、どのような形で支払われるかを巡る疑問が渦巻いており、1917年のボリシェビキ革命以来の大規模な対外債務デフォルト(債務不履行)が発生するのではないかとの不安が高まっている。当時、革命で成立したソ連政府は、ロシア帝国の債務継承を拒否した。

ロシアの対外債務とその返済に関する現在の主な問題は、以下の通り。

◎外貨建て債務の規模

ロシアは国際金融市場で起債した15本の債券を抱えており、発行残高は約400億ドルに上る。その約半分を海外投資家が保有する。

16日の利払いは最初の期日で、さらに6億1500万ドル相当が今月中に控えている。元本返済が始まるのは4月4日で、20億ドルの債券が満期を迎える。

これらの債券は期間、契約内容ともまちまち。2014年のロシアによるクリミア編入後の起債分には、ドル以外の通貨による支払いもあり得るとの条項が含まれ、18年以降に上場された債券は代替支払い通貨としてルーブルが明記された。

16日の利払いが予定される2本のユーロ債は13年上場のため、ドル決済が想定されている。支払いを代行するのはシティグループだ。

フィッチ・レーティングスは15日、支払いがルーブルで行われ、30日の猶予期間後も修正されない場合、デフォルトの要件を満たすとの見解を示した。

このユーロ債の目論見書には、ドル以外の通貨での支払いは、受け取り側がドルに交換し、それが公開市場を通じた取引で投資分の回収が可能な金額であった場合にのみ、効力を発すると定められている。

シティはコメントを拒否した。

◎ロシア政府の支払い意思

経済制裁は特にロシア中央銀行の外貨準備凍結という面でじわじわと効果を発揮しており、ロシア政府は貴重になった外貨を外国投資家に送金する事態になることをためらっている。

プーチン大統領が5日に発した命令では、ロシアの債務者は外国債権者にルーブルで支払うことが可能となり、自分たちの資金を政府の特別口座に置くことができる。もっとも中銀と財務省は、幾つかの例外規定も設けた。

大統領令に付随する文書はもう少し微妙な内容で、外貨支払いにも道を開いているように見える。財務省は14日、外貨決済のための暫定的な手続きを承認し、ロシアは期限通り全面的に支払い義務を遂行すると強調した。しかし、外国銀行が支払いを執行できない場合は、ロシア政府が特別講座にルーブルを入金する可能性がある。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

豪ボンダイビーチ銃撃、容疑者親子の軍事訓練示す証拠

ビジネス

英BP、豪ウッドサイドCEOを次期トップに任命 現

ワールド

アルゼンチンの長期外貨建て格付け「CCC+」に引き

ビジネス

日経平均は反落で寄り付く、米ハイテク株安受け半導体
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:教養としてのBL入門
特集:教養としてのBL入門
2025年12月23日号(12/16発売)

実写ドラマのヒットで高まるBL(ボーイズラブ)人気。長きにわたるその歴史と深い背景をひもとく

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入ともに拡大する「持続可能な」貿易促進へ
  • 4
    空中でバラバラに...ロシア軍の大型輸送機「An-22」…
  • 5
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 6
    身に覚えのない妊娠? 10代の少女、みるみる膨らむお…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】「日の丸造船」復権へ...国策で関連銘柄が軒…
  • 9
    9歳の娘が「一晩で別人に」...母娘が送った「地獄の…
  • 10
    「最低だ」「ひど過ぎる」...マクドナルドが公開した…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    【衛星画像】南西諸島の日米新軍事拠点 中国の進出を睨み建設急ピッチ
  • 4
    デンマーク国防情報局、初めて米国を「安全保障上の…
  • 5
    「勇気ある選択」をと、IMFも警告...中国、輸出入と…
  • 6
    【実話】学校の管理教育を批判し、生徒のため校則を…
  • 7
    ミトコンドリア刷新で細胞が若返る可能性...老化関連…
  • 8
    【銘柄】資生堂が巨額赤字に転落...その要因と今後の…
  • 9
    【クイズ】「100名の最も偉大な英国人」に唯一選ばれ…
  • 10
    香港大火災の本当の原因と、世界が目撃した「アジア…
  • 1
    日本がゲームチェンジャーの高出力レーザー兵器を艦載、海上での実戦試験へ
  • 2
    人口減少が止まらない中国で、政府が少子化対策の切り札として「あるもの」に課税
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 9
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
  • 10
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中