最新記事

自動車

日本のEV先進エリアは首都圏ではなく地方都市 中国のバカ売れ人気車が教える普及のカギとは

2022年2月28日(月)19時11分
山崎 明(マーケティング/ブランディングコンサルタント) *PRESIDENT Onlineからの転載

田舎の中小都市の若年層にバカ売れ

この車は「45万円のEV」として昨年日本でも話題になったモデルだ。この宏光MINI EVは2万8800元(現時点のレートでは52万3000円)から買えるが、エアコン付きのモデルは3万2800元(59万6000円)、電池容量を増やして航続距離を170kmにしたモデル(通常モデルは120km)は3万8800元(70万5000円)である。

確かに電気自動車としては破格に安く、普通の車としてもとても安い。ボディサイズは全長2917mm×全幅1493mm×全高1621mと日本の軽自動車より50cm近く短い。車重も700kg前後と軽い。しかし車としての機能はそれなりにしっかりしており、後席は非常に狭いものの4人乗車が可能で最高速は100km/h、ABSやエアバッグなど基本的な安全装備も備わっている。

もちろん低価格を実現するために割り切った部分もあり、急速充電には非対応で、家庭用の220V電源からの充電のみ。減速時にエネルギーを回収する回生機能も備わらない。

同じEVといっても、テスラやNIOのような高級高性能EVとはあらゆる面で異なる車だ。もちろん購入層もまったく異なる。テスラは主に北京や上海といった富裕層の多い大都市で売れているのに対し、宏光MINI EVは田舎の中小都市の若年層を中心に売れているのだ。

電動スクーターからステップアップ

中国の田舎では今でも十分な数のガソリンスタンドがなく、公共交通も整備されておらず、また所得水準も低いため、多くの人は家庭用電源で充電できる電動スクーターを使っている。

この電動スクーターからのステップアップ需要に宏光MINI EVがぴったりはまったのである。スタイリングもシンプルで好ましいもので、中国の若者は自分好みにドレスアップして楽しんでいるようだ。

スクーターでも家庭用電源で夜間充電していたので、使い勝手もまったく変わらない。集合住宅に住んでいても、窓から電線を垂らして充電しているようだ。もともと長距離を乗るつもりなどない需要だから、航続距離は120kmあれば十分である。電池容量も少ないため、通常の家庭用電源でも一晩で満充電にできる(充電時間は6.5時間)。

また脱炭素という側面からもこのEVは理にかなっている。回生しないという問題はあるものの、バッテリーの容量は小さく車体重量は軽く、生産時も走行時もエネルギー消費は小さい。

日本での普及のカギは「地方の足となる軽EV」か

テスラのような高性能・大型EVは生産時に多大なCO2を排出してしまうため、ライフサイクル全体で考えるとガソリン車と大差ないCO2排出量となってしまう。また短距離走行でも常に大きく重いバッテリーを抱えながら走ることになり、非合理的だ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

中国首相、フォーラムで一段の経済開放約束 日本企業

ワールド

G7、エネ供給支援へ必要な措置講じる用意 外相声明

ワールド

トランプ氏、米空港にICE捜査官派遣と警告 予算巡

ワールド

トランプ氏、イランに48時間以内のホルムズ開放求め
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン革命防衛隊
特集:イラン革命防衛隊
2026年3月24日号(3/17発売)

イスラム神権国家を裏からコントロールする謎の軍隊の歴史と知られざる実力

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【銘柄】「三菱商事」の株価に高まる期待...ホルムズ海峡封鎖と資源価格高騰が業績を押し上げ
  • 2
    「カメラの目の前」で起きた爆発の瞬間...取材中の記者に、イスラエル機がミサイル発射(レバノン)
  • 3
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 ──「成功」が招く自国防衛の弱体化
  • 4
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 5
    スウェーデン次期女王ヴィクトリア皇太子、陸軍訓練…
  • 6
    レストラン店内で配膳ロボットが「制御不能」に...店…
  • 7
    人気セレブの「問題ビデオ」拡散を受け、出演する米…
  • 8
    「筋力の正体」は筋肉ではない...ストロングマンが語…
  • 9
    トランプ政権の「大本営」、イラン戦争を批判的に報…
  • 10
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期スペイン女王は空軍で訓練中、問われる「軍を知る君主」
  • 3
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え時の装いが話題――「ファッション外交」に注目
  • 4
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 5
    メーガン妃、娘リリベット王女との「お手伝い姿」公…
  • 6
    第6回大会を終えて曲がり角に来たWBC
  • 7
    【衛星画像】イラン情勢緊迫、米強襲揚陸艦「トリポ…
  • 8
    韓国製ミサイル天弓-II、イラン戦争で96%迎撃の衝撃 …
  • 9
    「マツダ・日産・スバル」が大ピンチ?...オーストラ…
  • 10
    「ネタニヤフの指が6本」はなぜ死亡説につながったの…
  • 1
    温暖化で増えた? サンマやサケ減少の裏で激増する「安価で栄養価の高い魚」の正体
  • 2
    ロシア政府、痛恨のミス...プーチンの「健康不安説」を裏付けるような動画を公式に投稿してしまう
  • 3
    メーガン妃、娘リリベット王女との新ショット公開...撮影はパパ
  • 4
    「ノーと言えるスペイン」の背景に国防意識...次期ス…
  • 5
    見事なカンフーを見せた中国ヒト型ロボットのからく…
  • 6
    キャサリン皇太子妃、ナイジェリア大統領夫妻出迎え…
  • 7
    アルコールは血糖値を下げる...「脳と血管を守る」医…
  • 8
    数時間以内に死に至ることも...若者の間で集団感染が…
  • 9
    「日本より、自分の国(フランス)を心配すれば?」…
  • 10
    日本の若者「韓国就職」憧れと現実のギャップ ── ビ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中