最新記事

経営

社員が次々と辞めていく中小企業の3つの特徴

2022年2月16日(水)16時40分
松本久美子 ※経営ノウハウの泉より転載

bee32-iStock.

<人材流出が止まらない! そうした会社には共通する特徴がある。どんな特徴なのか、どうすれば改善できるのか>

とある中堅メーカー営業部長のつぶやきです。


「えっ!? Aさんに退職意向があるって?」
Aさんは半年前に中途で採用した社員だ。商品知識を覚えてもらい、ようやく先月からクライアントを担当し始めたばかりだ。部長はまた求人票を準備して、面接をして、導入教育をして、という一連の中途採用のプロセスを思い浮かべてげんなりしてしまう。
「ところで、なんでAさんは辞めたいの?」と、Aさんの退職意向を部長に告げにきた教育係のBさんに問うものの「いやぁ、どうなんでしょうか......」と、Bさん自身も覇気がない様子で答える。
「まさか、Bさんも退職したいのではないだろうか......」と、部長は不安を覚える。

少ない人数で事業運営を行っている中小企業にとっては、一人の社員の退職のダメージは極めて大きいです。退職や入社による人材の入れ替わりは企業が活性化するためにある程度は必要ですが、度を過ぎる人材流出はさまざまな弊害を生んでしまいます。

今回は人材流出が高い中小企業の特徴と、改善するための対策を紹介します。「いつも採用活動をしていて、本業に費やす時間が捻出できない」や「辞める理由が分からないので、手の打ちようがない」などとお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

人材流出が企業にもたらす影響

厚生労働省発表の『雇用動向調査』よると、ここ10年の企業の離職率(1年間で退職した人の割合)は15%程度で推移しています。もし離職率がこの値を大幅に超えているようであれば、要注意です。単なる退職というだけでなく、ネガティブな退職理由が根本的にある"人材流出"状態の可能性があります。

退職者が出ると中途採用で補充するかと思いますが、多くの企業が即戦力となる優秀な人材を必要としている中、中小企業が必要な人材を獲得するのは簡単ではありません。

退職者がいなければ発生しないコストもあります。リクルートの『就職白書2020』によると、中途採用一人当たりに発生するコストは約103万円と高額です。もちろん、採用や育成に費やす既存社員の人的コストも無視できません。

このように、人材流出は企業にとって、ネガティブな影響を与えがちです。

人材流出が続く企業の特徴

では、どうして社員は退職してしまうのでしょうか? 多くの企業では退職者に理由を聞くかと思いますが、ネガティブな理由については口を閉ざす人が多いのが実態です。筆者のコンサルティングの経験では、転職された企業側が把握している課題と、転職希望者への理由のヒアリングでは少なからず乖離がありました。

筆者の経験をもとに、表に出ない退職者の本音にスポットを当て、人材流出が高い企業の特徴を抽出します。

■人間関係が悪い

人間関係の悪化は、退職理由の最も多い理由の1つです。一般的な企業では1日に8時間ほど職場で過ごします。リモートワークが主流となったといっても、仕事を共にする人間の影響はとても大きいです。

人間関係が理由での退職が多い企業には、"風通しが悪い"、"社員の愚痴を言う人が多い"、"部署間の対立がある"などの特徴が挙げられます。

さらに、見過ごせないのが、"マネジメント層との関係"です。単なる人間関係より、自分の評価決定者である上司への不満は退職意向へつながりやすいです。大手企業であれば人事異動で解消できるかもしれませんが、中小企業では上司への不満を解消するには退職という道しか残されていないこともあるでしょう。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

アングル:「豪華装備」競う中国EVメーカー、西側と

ビジネス

NY外為市場=ドルが158円台乗せ、日銀の現状維持

ビジネス

米国株式市場=上昇、大型グロース株高い

ビジネス

米PCE価格指数、インフレ率の緩やかな上昇示す 個
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された米女優、「過激衣装」写真での切り返しに称賛集まる

  • 3

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」──米国防総省

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 6

    アカデミー賞監督の「英語スピーチ格差」を考える

  • 7

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 8

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 9

    大谷選手は被害者だけど「失格」...日本人の弱点は「…

  • 10

    「鳥山明ワールド」は永遠に...世界を魅了した漫画家…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 10

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中