最新記事

自動車

自動運転車の開発競争、先頭ゴールは意外にもトラック?

2021年12月17日(金)13時45分
自動運転車を使って作業する、オクスボティカの従業員

完全な自動運転による乗用車はスタートを切るにも苦労しており、投資家の中には、ドライバー抜きのトラックの方が最初にゴールにたどり着く方に賭けようという動きも見られる。写真は10月、アプライドEVが開発した用途特化型の完全電動による自動運転車を使って作業する、オクスボティカの従業員。英オックスフォードで撮影(2021年 ロイター/Nick Carey)

イーロン・マスク氏の言葉がもし真実だったら、私たちは今ごろ自動運転の「ロボタクシー」で街中を行き来しているはずだった。

しかし現実には、完全な自動運転による乗用車はスタートを切るにも苦労している。投資家の中には、ドライバー抜きのトラックの方が最初にゴールにたどり着く方に賭けようという動きも見られる。

ほんの1年前、ロボタクシーを開発するスタートアップ企業による資金調達額は、トラックやバス、物流用車両の自動運転を手がける企業に比べ、8倍も多かった。

だが、主要幹線道路や固定された配送ルート、あるいは鉱山や港湾など自転車や歩行者の姿がまれな環境で運用されるトラックの方が、ロボタクシーに比べて規制面・技術面のハードルが低いため、現在ではむしろこちらが先に利益を生むようになると見られている。

スタートアップ企業関連のデータを提供するサイト「ピッチブック」によれば、今年に入ってから12月6日までに、自動運転物流用車両への累積投資額は、2020年同時期の13億ドル(約1476億円)に対し、65億ドルへと5倍に膨れ上がっている。

一方、ピッチブックがロイター向けにまとめたデータで見ると、ロボタクシー企業への投資額は、2020年同時期の108億ドルから22%減の84億ドルだった。

実際のトレンドは、こうした数字よりもさらに顕著かもしれない。というのも、アルファベット傘下のウェイモなどロボタクシー企業の一部は、自動運転トラック事業への投資を増やしているからだ。

ロボティック・リサーチは9日、トラック事業に関する最近の合意により2億2800万ドルを調達したと発表した。同社は、自動運転によるトラック、バス、物流用車両事業を拡大するため、初めて外部の投資家にアプローチした。

新たな資金を提供した投資家の中には、ソフトバンクグループ傘下のビジョン・ファンド2、エンライトメント・キャピタルや、自動運転車に用いられるLIDARセンサーを製造するルミナー・テクノロジーズなどの名が見られる。

ロボティック・リサーチのアルベルト・ラカゼ最高経営責任者(CEO)はロイターに対し、顧客にとって「今すぐ」投資対効果を生むような規模で自動運転車を展開してきたと語った。

「顧客は2025年まで待つ必要はない。あらゆるセンサーのコストを今とは桁違いに下げなければならないロボタクシーとはわけが違う」

誇大な約束

テスラのイーロン・マスク氏は、ほんの2年前には、ロボタクシー100万台を「来年、確実に」実現すると約束していた。しかし、どこにでも安全に行ける自動運転車が実現するのはまだ遠い先の話だ。

電気自動車(EV)関連スタートアップのルーシッド・モーターズを率いるピーター・ローリンソン氏は、先月、最先端のセンサーを使うとしても、ロボタクシーを実際の路上で運用するのは10年先になるとの考えを示した。

ピッチブックでモビリティー分野の首席アナリストを務めるアサド・フセイン氏は、今後数年での本格的な実用化という点では、短距離用の自動運転バンを製造するガティックや小型配送ロボットのニューロといったスタートアップ企業の方が、ウェイモや、そのライバルであるクルーズを上回るのではないかと話した。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

アングル:日銀、柔軟な政策対応の局面 米関税の不確

ビジネス

米人員削減、4月は前月比62%減 新規採用は低迷=

ビジネス

GM、通期利益予想引き下げ 関税の影響最大50億ド

ビジネス

米、エアフォースワン暫定機の年内納入希望 L3ハリ
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
特集:英語で学ぶ 国際ニュース超入門
2025年5月 6日/2025年5月13日号(4/30発売)

「ゼロから分かる」各国・地域情勢の超解説と時事英語

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に高く、女性では反対に既婚の方が高い
  • 2
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来が来るはずだったのに...」
  • 3
    タイタニック生存者が残した「不気味な手紙」...何が書かれていた?
  • 4
    ポンペイ遺跡で見つかった「浴場」には、テルマエ・…
  • 5
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」では…
  • 6
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 7
    インド北部の「虐殺」が全面「核戦争」に発展するか…
  • 8
    クルミで「大腸がんリスク」が大幅に下がる可能性...…
  • 9
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 10
    悲しみは時間薬だし、幸せは自分次第だから切り替え…
  • 1
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 2
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 3
    MRI検査で体内に「有害金属」が残留する可能性【最新研究】
  • 4
    中国で「ネズミ人間」が増殖中...その驚きの正体とは…
  • 5
    ロシア国内エラブガの軍事工場にウクライナが「ドロ…
  • 6
    日本の未婚男性の「不幸感」は他国と比べて特異的に…
  • 7
    パニック発作の原因の多くは「ガス」だった...「ビタ…
  • 8
    使うほど脱炭素に貢献?...日建ハウジングシステムが…
  • 9
    私の「舌」を見た医師は、すぐ「癌」を疑った...「口…
  • 10
    マリフアナを合法化した末路とは? 「バラ色の未来…
  • 1
    【話題の写真】高速列車で前席のカップルが「最悪の行為」に及ぶ...インド人男性の撮影した「衝撃写真」にネット震撼【画像】
  • 2
    日本史上初めての中国人の大量移住が始まる
  • 3
    日本旅行が世界を魅了する本当の理由は「円安」ではない
  • 4
    健康寿命を伸ばすカギは「人体最大の器官」にあった.…
  • 5
    【心が疲れたとき】メンタルが一瞬で “最…
  • 6
    間食はなぜ「ナッツ一択」なのか?...がん・心疾患・抜…
  • 7
    北朝鮮兵の親たち、息子の「ロシア送り」を阻止する…
  • 8
    中居正広は何をしたのか? 真相を知るためにできる…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「半導体の工場」が多い国どこ…
  • 10
    自らの醜悪さを晒すだけ...ジブリ風AIイラストに「大…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中