最新記事

アメリカ経済

収穫の秋迎える米農業 ここでも頭痛の種は「モノ不足」

2021年10月19日(火)11時55分
オハイオ州ラベンナの農家デール・ネシング氏

米イリノイ州の農家、デール・ハッデンさんは困り果てていた。写真は収穫用コンバインの修理を待つオハイオ州ラベンナのデール・ネシングさん。11日撮影(2021年 ロイター/Dane Rhys)

米イリノイ州の農家、デール・ハッデンさんは困り果てていた。 コンバイン収穫機用のスペアタイヤが手に入らないのだ。収穫スタッフには、タイヤを傷つける金属屑を避けるため、今年の秋は路肩を走らないように注意した。

カンザス州のニュー・アグ・サプライでは、来春の植え付け期に向けた部品を今のうちに注文しておくよう顧客に要請している。またアイオワ州の農家コルト・ホラブさんは、毎晩、農機を納屋に入れて施錠している。ディア・アンド・カンパニー 系列の地元の農機ディーラーで、いまや入手困難となったトラクターの部品が盗まれる事件があったからだ。

アイオワ州バッキンガムで、4代続けてトウモロコシと大豆の栽培を続けているホラブさんは、「皆、農機を我が子のように大切に扱っているが、今のところ、部品の入手は運任せだ」と話す。

製造部門のメルトダウンは米国の中部地域に打撃を与えている。農機メーカーは数カ月にわたって半導体不足に悩まされてきたが、品薄は他の部品にまで広がってきた。サプライチェーンの問題は、今や米国内での食糧供給、さらには農家の収穫能力まで脅かしている。

農家では、農機が故障した場合の応急措置を見つけることに追われており、地元の溶接工や機械工を探しているという。農機オークションサイト「マシナリー・ピート」の創設者であるグレッグ・ピーターソン氏によれば、スペアタイヤの価格が高く入手困難になっているため、トラクターやコンバインをネットで購入しようとする農家が、タイヤ部分のアップの写真を要求しているという。

「収穫期が終わりに近づくにつれて、農機オークションに参加する農家は、本体ではなく部品を求めるようになる」とピーターソン氏は言う。「すでに、部品取り用に2台目の播種機や散布機を買おうかなどという話も出ているくらいだ」

入手難のために古い部品の再利用や補修を余儀なくされている農家もある。

ラミ・ウォーバートン、ボブ・ウォーバートン両氏がワシントン州西部で経営する小規模な溶接工場は、かんがい設備の部品からヒビの入ったブルドーザーのバケットまで、農家から入る修理の注文を何とかこなすのに手一杯だ。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

鉄鋼関税、2倍の50%に引き上げへ トランプ米大統

ビジネス

アングル:トランプ関税、世界主要企業の負担総額34

ワールド

トランプ米大統領、日鉄とUSスチールの「パートナー

ワールド

マスク氏、政府職を離れても「トランプ氏の側近」 退
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:岐路に立つアメリカ経済
特集:岐路に立つアメリカ経済
2025年6月 3日号(5/27発売)

関税で「メイド・イン・アメリカ」復活を図るトランプ。アメリカの製造業と投資、雇用はこう変わる

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プーチンに、米共和党幹部やMAGA派にも対ロ強硬論が台頭
  • 3
    イーロン・マスクがトランプ政権を離脱...「正直に言ってがっかりした」
  • 4
    3分ほどで死刑囚の胸が激しく上下し始め...日本人が…
  • 5
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 6
    【クイズ】生活に欠かせない「アルミニウム」...世界…
  • 7
    「これは拷問」「クマ用の回転寿司」...ローラーコー…
  • 8
    ワニにかまれた直後、警官に射殺された男性...現場と…
  • 9
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
  • 1
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「MiG-29戦闘機」の空爆が、ロシア国内「重要施設」を吹き飛ばす瞬間
  • 2
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」時代の厳しすぎる現実
  • 3
    【クイズ】世界で最も「ダイヤモンド」の生産量が多い国はどこ?
  • 4
    「ウクライナにもっと武器を」――「正気を失った」プ…
  • 5
    アメリカよりもヨーロッパ...「氷の島」グリーンラン…
  • 6
    デンゼル・ワシントンを激怒させたカメラマンの「非…
  • 7
    「ディズニーパーク内に住みたい」の夢が叶う?...「…
  • 8
    友達と疎遠になったあなたへ...見直したい「大人の友…
  • 9
    ヘビがネコに襲い掛かり「嚙みついた瞬間」を撮影...…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 1
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 2
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 3
    脂肪は自宅で燃やせる...理学療法士が勧める「3つの運動」とは?
  • 4
    「2025年7月5日に隕石落下で大災害」は本当にあり得…
  • 5
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 6
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
  • 7
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 8
    【クイズ】世界で2番目に「軍事費」が高い国は?...1…
  • 9
    部下に助言した時、返事が「分かりました」なら失敗…
  • 10
    今や全国の私大の6割が定員割れに......「大学倒産」…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中