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アメリカ経済

収穫の秋迎える米農業 ここでも頭痛の種は「モノ不足」

2021年10月19日(火)11時55分

ラミ・ウォーバートン氏は、「このあたりは干ばつの真っ只中だった 」と語る。「そういう時期には、畑への水やりを1カ月も待っているわけにはいかない。作物が枯れてしまうからね」

「次から次へと難題が」

米国・アジアの製造業拠点における新型コロナウイルスに伴う生産停止、主要港湾を混乱させているコンテナ不足、そして人手不足といった要因による供給網の機能不全により、穀物価格がほぼ10年ぶりの高値にまで上昇しているにもかかわらず、農機メーカーはせっかくの好機を十分に収益につなげられずにいる。

パーデュー大学とCMEグループによる「農業経済バロメーター」は農家の景況感を毎月測定するものだが、10月初めには10%低下し、2020年7月以来で最も低い水準となった。栽培農家に重くのしかかっているのは供給面での懸念であり、調査に回答した農家の55%は、在庫が乏しいせいで農機の購入計画に支障が出ていると答えている。

パンデミックの間、鉄、プラスチック、ゴムその他の原材料は利用しにくくなっていたが、中国の複数の製鉄所がここ数週間、電力不足により生産削減に追い込まれているため、メーカー各社はさらに多くのショックに備えているところだ。

農機メーカーのAGCO でグローバル規模のサプライチェーン管理を指揮するグレッグ・トゥーンマン氏によれば、この夏、同社幹部が米国中西部のサプライヤー各社を訪問したところ、一部の企業は通常の従業員のわずか60%で操業していたという。

トゥーンマン氏は、ノースダコタ、サウスダコタ、ネブラスカ、テキサス各州では、サプライヤー数社で従業員の減少が見られたと話す。従業員がバイデン大統領のワクチン接種義務化に反発したり、新型コロナ感染を恐れて仕事から離れたり他の職場に移ったりしているためだという。

「頭痛薬が手放せない状況だ」とトゥーンマン氏は言う。「次から次へと難題がやってくる」

供給の逼迫(ひっぱく)によって特に苦しんでいるのが農機ディーラーだ。通常であれば、伝統的な収穫期である9月から11月にかけて修理ビジネスが活況を呈するものだ。

だが今年は、何か役に立つものはないかと10年前からの在庫をあさっているディーラーさえある。ディーラーにとって悩みの1つは、トラクターの誘導・データシステムの運用に使われるGPS受信機が業界全体で不足していることだ。

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