総合格闘技の黎明期に光を当てる『スマッシング・マシーン』は、スポーツ映画のイメージを覆そうとする。ベニー・サフディ監督はこれまで主に兄のジョシュと組み、「サフディ兄弟」として活動してきた。単独で劇場公開作を撮るのは今回が初めてだ。

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『スマッシング・マシーン』は見る者を元気づける『クリード チャンプを継ぐ男』のような映画でも、『アイアンクロー』のような陰気な悲劇でもない。弱さを抱えながら格闘技に打ち込んだ1人の男の肖像だ。

何より主演のドウェイン・ジョンソンにとっては格好の腕の見せどころ。ジョンソンは親しみやすいアクションヒーローや、家族のために体を張るパパのキャラクターで知られてきた。そんなスクリーン上の顔には、「ザ・ロック」のリングネームで鳴らしたプロレスラー時代のイメージががっちり結び付いている。

これまでになくダークで激情型のキャラクターを選んだことで、ジョンソンは新境地を切り開いた。だからこそ、サフディの脚本が惜しい。サフディが感傷や大仰な感情表現を徹底的に避けたために物語の核心が見えず、ジョンソンも映画自体も本領を発揮できていないのだ。

「スマッシング・マシーン(壊し屋)」の異名を取ったケアー