大戦争は新たな国際秩序をもたらす。1618年に勃発した三十年戦争は、ウェストファリア体制につながった。第2次大戦は結果的にブレトンウッズ体制を生み出し、脱植民地化や欧州統合を加速させた。だが全ての戦争がそうではなく、イラン戦争はとりわけ破壊的なものになりそうだ。
イラン戦争は世界を悪化させる可能性が高い。体制転換が実現するどころか、イランは軍事独裁を固めつつある。核問題でどんな譲歩をするにしても、中国・ロシア・北朝鮮との関係は不変で、イランは地域不安定化要因であり続けるだろう。
戦争前との違いは、ペルシャ湾岸のイラン近隣国が、庇護者であるはずのアメリカへの信頼を失ったことだ。湾岸諸国はより弱体化し、分断が深刻化している。
確かに、湾岸アラブ6カ国が構成する湾岸協力会議(GCC)はこれまでも、防衛分野の連携はもちろん、政治協力や経済統合の可能性も実現し切れていなかった。しかし、イラン戦争で各国の莫大な投資事業は暗礁に乗り上げ、脱石油と経済多角化の取り組みが(おそらく絶望的に)損なわれている。さらに、GCCの機能不全が露呈し、加盟国間の亀裂は深まっている。
GCC加盟国のうち、外交による戦争阻止を目指していたサウジアラビアは、ホルムズ海峡で船舶誘導作戦を開始したアメリカに自国の基地使用や領空通過を認めないと通告した一方、パキスタンと共に水面下で停戦仲介努力を続ける。そこから浮かび上がるのは、パキスタンとの協力関係の発展と、対イラン融和政策の継続路線だ。
カタールやオマーンもイランに融和的な姿勢を維持する可能性が高い。対照的なのは、アラブ首長国連邦(UAE)だ。イランの湾岸諸国攻撃に対して断固とした措置を取らなかったと近隣国を猛批判し今年4月、OPEC(石油輸出国機構)脱退を発表した。