最新記事

インフラ開発

G7発表の一帯一路対抗「B3W」 関係国歓迎も西側各国の有言実行が鍵

2021年6月21日(月)10時43分
一帯一路のイメージジオラマ

G7が中国の広域経済圏構想「一帯一路」に対抗して打ち出した途上国向けのインフラ支援構想は、中国の影響が直接及ぶ国々から歓迎を受けている。写真は2019年4月、北京で開かれた「一帯一路」に関するフォーラムで撮影(2021年 ロイター/Jason Lee)

主要7カ国(G7)が中国の広域経済圏構想「一帯一路」に対抗して打ち出した途上国向けのインフラ支援構想「Build Back Better World (B3W)」は、中国の影響が直接及ぶ国々から歓迎を受けている。ただ西側諸国がどれほど本気でプロジェクトに関与するかを巡り疑念も残っており、それを克服していくことが主要国の課題だ。

B3Wは英国で週末開かれたG7首脳会議(サミット)で合意。詳細はほとんど固まっておらず、実現には数年を要する見通しだ。

ただ今回の合意は、途上国における中国の覇権拡大に対するG7の挑戦だと見なされている。

アジア諸国はB3Wへの協力に前向きな姿勢を示しているが、G7の課題は中国の実績に匹敵するスピードで投資を進められるかどうかだ。

シンガポールのISEASユソフ・イシャク研究所のディレクター、チョイ・シン・クォック氏は、東南アジア諸国は中国への過度の依存を警戒しているため、B3Wが入り込む余地はあると指摘。ただ同時に、B3Wは複数国による取り組みという性質上、一帯一路より複雑でスピードも遅くなる可能性があるとみている。

「一帯一路プロジェクトに参加した東南アジア諸国は、これまで容易に取引が結べたから、という理由で参加したケースが多い。何らかの主義主張や地政学的な理由ではない」という。

B3Wのプロジェクトは、G7諸国とその同盟国が、天候、健康、デジタル技術、性の平等といった分野で民間セクターの資本を動員して行うことになる。 

インドネシアのマヘンドラ・シレガル外務副大臣はロイターに対し、同国には共同投資が可能なプロジェクトが複数あり、先進諸国との協力を強化する準備はあると述べた。

ただ、インドネシアの一帯一路プロジェクトで主な窓口となる海事・投資調整省の報道官はロイターに対し、先進国はインドネシアの開発への関与に消極的だった過去を改める必要があると指摘。「われわれはB3Wを歓迎する。しかしもちろん、今回は有言実行を期待する」と述べた。

政治ではなく投資

中国政府は昨年、一帯一路プロジェクトの約2割が新型コロナウイルス大流行の影響を受けたとしている。また、複数の国々はコストや主権侵害、汚職などを理由に一帯一路プロジェクトの見直し、キャンセル、関与の縮小を求め、中国は一部の計画を後退させざるを得なくなった。

ただアナリストや政策立案者によると、アジアの長期的な開発ニーズは巨大で、中国の覇権拡大に対する懸念といった政治的要因を凌駕しそうだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ワールド

米特使がガザ訪問、援助活動を視察 「食料届ける計画

ビジネス

ドル・米株大幅安、雇用統計が予想下回る

ビジネス

米労働市場おおむね均衡、FRB金利据え置き決定に自

ビジネス

米7月雇用7.3万人増、予想以上に伸び鈍化 過去2
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:トランプ関税15%の衝撃
特集:トランプ関税15%の衝撃
2025年8月 5日号(7/29発売)

例外的に低い日本への税率は同盟国への配慮か、ディールの罠か

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 2
    「週4回が理想です」...老化防止に効くマスターベーション、医師が語る熟年世代のセルフケア
  • 3
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿がSNSで話題に、母親は嫌がる娘を「無視」して強行
  • 4
    カムチャツカも東日本もスマトラ島沖も──史上最大級…
  • 5
    【クイズ】2010~20年にかけて、キリスト教徒が「多…
  • 6
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅…
  • 7
    一帯に轟く爆発音...空を横切り、ロシア重要施設に突…
  • 8
    これはセクハラか、メンタルヘルス問題か?...米ヒー…
  • 9
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 10
    ニューヨークで「レジオネラ症」の感染が拡大...症状…
  • 1
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 2
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜つくられる
  • 3
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経験豊富なガイドの対応を捉えた映像が話題
  • 4
    日本人の児童買春ツアーに外務省が異例の警告
  • 5
    12歳の娘の「初潮パーティー」を阻止した父親の投稿…
  • 6
    中国が強行する「人類史上最大」ダム建設...生態系や…
  • 7
    いま玄関に「最悪の来訪者」が...ドアベルカメラから…
  • 8
    枕元に響く「不気味な咀嚼音...」飛び起きた女性が目…
  • 9
    【クイズ】1位は韓国...世界で2番目に「出生率が低い…
  • 10
    航空機パイロットはなぜ乗員乗客を道連れに「無理心…
  • 1
    その首輪に書かれていた「8文字」に、誰もが言葉を失った
  • 2
    ウォーキングだけでは「寝たきり」は防げない──自宅で簡単にできる3つのリハビリ法
  • 3
    頭はどこへ...? 子グマを襲った「あまりの不運」が話題に
  • 4
    幸せホルモン「セロトニン」があなたを変える──4つの…
  • 5
    囚人はなぜ筋肉質なのか?...「シックスパック」は夜…
  • 6
    「細身パンツ」はもう古い...メンズファッションは…
  • 7
    ディズニー・クルーズラインで「子供が海に転落」...…
  • 8
    「ベンチプレス信者は損している」...プッシュアップ…
  • 9
    ロシアの労働人口減少問題は、「お手上げ状態」と人…
  • 10
    いきなり目の前にヒグマが現れたら、何をすべき? 経…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中