インタビュー:短期志向のアクティビスト対策、現預金の活用戦略明示が王道=金融庁長官
写真は金融庁の伊藤豊長官。都内で3月18日撮影。 REUTERS/Kim Kyung-Hoon
Kentaro Okasaka Makiko Yamazaki
[東京 19日 ロイター] - 金融庁の伊藤豊長官は、日本の成長に向け、家計における貯蓄から投資、企業における内部留保から投資へのシフトを加速させていく必要があるとの考えを強調した。現預金を含む経営資源を企業価値向上のためにどう活用していくかについての戦略を明示しておくことが「アクティビスト(物言う株主)対策の王道ではないか」と語った。
ロイターの単独インタビューで語った。
伊藤長官は、成長のために「どういう風にお金を回していくのかが今の日本の大きな課題だ。金融庁として貢献できることをやっていく」と述べた。不動産担保に過度に依存せず、事業の将来性を評価し融資する「企業価値担保権」制度が5月に始まることに触れ「企業の成長に結びつくためのお金を供給するのは銀行の役割だ。そのための一つの道具を提供するということだ」と指摘、スタートアップや、新分野に進出する「第二創業」などへの融資拡大に期待を示した。
<現預金の有効活用「検証を」>
金融庁が進める「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」改訂案では、「現預金を投資等に有効活用できているかを含め、不断に検証を行うべき」との文言が盛り込まれている。伊藤長官は「お金で貯めておくのではなく、設備投資や人的投資にお金を使っていかなければいけないと経営者の方々が思っているところに(新コードを)マッチさせることで、動きを加速させていく」と述べた。
大企業の現預金残高は2024年度末に約80兆円と20年前と比べて約2倍に増えた一方、成長投資に十分に資金が行き届いていないとの指摘がある。高市早苗首相は昨年の自民党総裁選時、コードを改定し、内部留保の使途を明示させるべきだと主張している。
キャッシュリッチで株価が割安な企業はアクティビストの的になりやすい面もある。伊藤長官は「中には非常に短期的な収益、株価の値上がりで売り抜いて終わりというアクティビストもいる。将来の投資に使われるべきものを短期に収奪してしまえば企業価値を損ねる」と話した。
企業にも業種によって、あるいは投資のタイミングなどによって現預金を抱える事情があることには理解を示した上で、短期志向の悪質なアクティビスト対策として最も有効なのは、成長戦略や現預金の使い道を説明して投資家の支持を得ておくことだと述べた。
<「対米投融資、銀行の収益機会にも」>
日米関税合意に基づく総額5500億ドル(約87兆円)の対米投融資を巡り、メガバンクなどの関与について伊藤長官は「枠組みの話ではなくて、個別のプロジェクトの話になる。プロジェクトごとに銀行はまず自分で健全性は大丈夫かを考える。(金融庁も)必要に応じて相談に乗っていく」と語った。「収益機会でもあるかもしれない。収益を取ろうと思えばリスクも取らなければならない部分もある。チャンスだとも言えるので、よく検討してほしいと思う」と話した。
<暗号資産、金融商品として規制下に>
金融庁は今年、暗号資産・ステーブルコイン課を新設する。暗号資産(仮想通貨)は決済手段よりも投資対象としての位置づけが強まっている。伊藤長官は「われわれが好むと好まざるとにかかわらず、もう世界的な金融商品だ」と指摘。金融商品として規制下に置くため、暗号資産の扱いを資金決済法から金融商品取引法に移すことになると説明し「投資家保護を図り、暗号資産交換業者、仲介業者にもしっかりとしたコンプライアンスの下で暗号資産を取り扱ってもらう」と語った。
ステーブルコインを巡っては、金融庁が3月、野村ホールディングスや大和証券グループ本社、メガバンク3行の5社が始めるステーブルコインを使った有価証券決済の実証実験に対する支援を決めたと発表している。伊藤長官は「デジタル通貨の枠組みの中でステーブルコインがどういう役割を果たすかというのは誰にも分からないが、必要なオプションとして研究しておかないといけない。それは金融機関もわれわれもそうで、協力して実証実験をやろうということだ」と説明した。
*インタビューは18日に実施しました。
(岡坂健太郎、山崎牧子 編集:橋本浩)





