最新記事

コロナバブル いつ弾けるのか

コロナ禍の東京で「不動産バブル」が始まる?

A TOKYO REAL ESTATE

2021年2月3日(水)19時15分
長嶋修(不動産コンサルタント、さくら事務所会長)

日本の不動産市場の一部が過熱し始めた理由は、国内外からの投資マネーの増加だけではない。

日本政府や日銀が不動産市場を下支えしている。新型コロナの影響で収入が減った個人事業主などを支援する家賃支援給付金は、事実上、不動産市場への公的資金注入に当たる。また、日銀によるREIT(不動産投資信託)やETF(上場投資信託)の積極的な購入は不動産・株式市場の支援策と言える。

こうした流れを受けて不動産や株式などのリスク資産の上昇を契機とした1990年代のようなバブルが東京の不動産市場で発生する可能性は高いと筆者はみている。

とはいえ、投資マネーが向かう先は東京を中心とした大都市、なかでも価格帯で言えば100億円以上の大規模な不動産に限定されている。

アベノミクス以降、国内不動産市場は「価値維持もしくは上昇」の15%、「数十年かけて下落し続ける」70%、「無価値あるいはマイナス価値」の15%という極端な三極化が進行してきた。今後、かつてのような「バブル的」な局面に突入する可能性があるのはトップ15%に限られる。

ここで言う「バブル的」とは、例えば「マイナス利回りでの取引」といったもの。1990年代バブル期やリーマン・ショック前のプチバブル期には、不動産の買いが買いを呼び、得られる賃料を勘案すると利回りがマイナスになる価格帯での取引が散見された。その理屈は「賃料上昇は後からついてくる」というものだ。

今後、なかば実体経済を無視する形で、世界的に見て相対的に割安感のある日本、特に東京を中心とした大都市部の不動産が、国内・海外マネーの標的になる可能性は高い。いわば「局地的バブル」の様相を呈することになるだろう。

新型コロナの感染拡大が収束しても、市場にあふれた投資マネーがすぐに消えることはない。不動産市場は、基本的に株式市場と連動しているため、日経平均株価が好調に推移する限り、この傾向は続くだろう。

一方で日本の全国レベルの不動産市場を見れば、2019年10月の消費税増税以降、新築・中古、マンション・一戸建て共に取引は低調だった。

「都心・大都市部」「駅前・駅近」といったワードに代表される好立地かつ高額な物件は好調だが、その一方で「立地に難がある」物件はことごとく厳しい状況にある。

長期的に見れば、人口・世帯数の減少が必至な日本では住宅需要全体がしぼむ傾向が続く。消費者サイドでは、立地条件、耐震性・省エネ性といった建物の基本性能など、物件の長期的ニーズを吟味した上で選択する、慎重な姿勢が求められることになるだろう。

<2021年2月9日号「コロナバブル いつ弾けるのか」特集より>

ニューズウィーク日本版 世界が尊敬する日本のCEO
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2025年7月1日号(6月24日発売)は「世界が尊敬する日本のCEO」特集。不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者……その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

イスラエル・イラン停戦、持続性は不透明とロシア外相

ビジネス

EXCLUSIVE-世界の中銀、準備資産で金・ユー

ワールド

イスラエル、イランへの攻撃指示 「停戦違反」主張 

ビジネス

中東情勢、火種残らないか注視必要=経団連会長
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本のCEO
特集:世界が尊敬する日本のCEO
2025年7月 1日号(6/24発売)

不屈のIT投資家、観光ニッポンの牽引役、アパレルの覇者......その哲学と発想と行動力で輝く日本の経営者たち

メールマガジンのご登録はこちらから。
メールアドレス

ご登録は会員規約に同意するものと見なします。

人気ランキング
  • 1
    「あまりに愚か...」国立公園で注意を無視して「予測不能な大型動物」に近づく幼児連れ 「ショッキング」と映像が話題に
  • 2
    妊娠8カ月の女性を襲ったワニ...妊婦が消えた川辺の「緊迫映像」
  • 3
    10歳少女がサメに襲われ、手をほぼ食いちぎられる事故...「緊迫の救護シーン」を警官が記録
  • 4
    JA・卸売業者が黒幕説は「完全な誤解」...進次郎の「…
  • 5
    「うちの赤ちゃんは一人じゃない」母親がカメラ越し…
  • 6
    気温40℃、空港の「暑さ」も原因に?...元パイロット…
  • 7
    「小麦はもう利益を生まない」アメリカで農家が次々…
  • 8
    飛行機内で「最悪の行為」をしている女性客...「あり…
  • 9
    イタリアにある欧州最大の活火山が10年ぶりの大噴火.…
  • 10
    ホルムズ海峡の封鎖は「自殺行為」?...イラン・イス…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中