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日銀の国債買入枠撤廃に「限界」見透かす金融市場 円高圧力も

2020年4月28日(火)07時38分

市場が見透かす日銀の「限界」

市場に財政ファイナンスと受け止められてでも、積極的な国債購入を打ち出した日銀。しかし、市場関係者は早くもその限界を指摘する。

国債については、金融機関には担保としての国債保有需要も根強く、「無制限に買うと言っても、市場にモノがあまりないので、政府が国債増発をしない限り日銀はあまり買えない」(エコノミスト)との声が聞かれる。

アライアンス・バーンスタインの駱氏は、国債の無制限購入と言っても増発分を増やすにすぎず、これまでの上限である年80兆円を上回る80―100兆円規模の買い入れをするとは想定していないという。

市場参加者は日米のバランスシートの拡大ペースを意識し始めている。今回のコロナ対策で、FRBがバランスシートを前年比6割強のペースで急拡大させているのに対して、日銀のBSの拡大は9%程度にとどまる。

仮に100兆円分の国債を単純に昨年9月末時点の資産に追加しても前年比では18%程度の増加にとどまる。

黒田総裁は会見で「日銀は大規模な金融緩和を継続している。加えて、感染症拡大を踏まえ、さまざまな手段により数十兆円の規模で資金供給を拡大している」と指摘。BSの名目GDPの比率やCP・社債の市場規模との比率などと比べても「日銀の金融緩和措置の規模は各国の中央銀行よりも大きい」と述べた。

ただ、日銀内ではクレジットリスクを日銀が負うことには消極的な声が目立ち、米政府がリスクを負う形でジャンク債の購入に踏み切ったFRBとは一線を画す。

リーマンショック後、白川方明総裁(当時)の下でBS拡大のペースの違いに焦点を当てる市場と日銀の取り組みの違いに苦悶した日銀。BSの拡大ペースに再び脚光が当たった時、米国との違いで再び円高圧力が強まるリスクが外為市場では指摘され始めた。

和田崇彦

(取材協力:坂口茉莉子 編集:石田仁志)

[東京 ロイター]


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