最新記事

事件

国外逃亡のゴーン、レバノンの記者会見で何を語るか

2020年1月8日(水)15時04分

日産自動車のカルロス・ゴーン元会長(写真)は逃亡先のレバノンで午後3時(日本時間同10時)記者会見を開く。写真はパリで2018年10月撮影(2020年 ロイター/Regis Duvignau)

日産自動車のカルロス・ゴーン元会長は逃亡先のレバノンで8日午後3時(日本時間同10時)記者会見を開く。2018年11月に金融商品取引法違反容疑で逮捕されて以来初めての生中継による会見で、日本からの逃亡によって「自由に」発言できるようになったとする立場で何を語るのかが注目される。

ゴーン被告は自身に対するすべての容疑を否認し、仏ルノーとの統合阻止を狙った日産の幹部らによる「陰謀」と「裏切り」の被害に遭ったと主張してきた。

元会長が保釈条件に違反してレバノンに逃亡して1週間余り。国際刑事警察機構(ICPO)からの逮捕手配書も出ており、世界的に著名な経営者としての名声は失われた。

首都ベイルートで開かれる会見の注目点は以下の通り。

予想される発言内容

ゴーン被告は、日産の幹部らがルノーとの経営統合を阻止するために、自身の追放を画策したと主張、日本政府関係者も関与したと述べている。記者会見ではさらに踏み込んだ説明が行われるとみられる。

被告の弁護団はこれまで、被告の追放を求める政府関係者と日産幹部らが「極秘チーム」を結成し、被告はその被害者となったと主張している。

ゴーン被告は昨年4月のビデオメッセージで、「数人の幹部」が「自分たちの利益のため、そして自分勝手な恐れを抱いたため」、自身を標的にしたと強調した。ただ、被告が裏切り行為をした幹部の実名を挙げた場面は、法的配慮から、弁護団によってカットされた。

ゴーン被告は米FOXビジネスに対し、記者会見で、自身を日産から下ろす陰謀に関与した人物の実名を公表する意向を示した。

不正を疑われている他の幹部

日産の内部調査では、ゴーン被告のほかに、西川広人前社長兼最高経営責任者(CEO)を含む複数の幹部が不当な報酬を受け取ったことが判明している。

西川氏は昨年、不当にかさ上げされた株価連動報酬を受け取っていた問題で、辞任を余儀なくされた。

元会長の不正を内部告発したハリ・ナダ専務執行役員も不当な報酬を受け取った疑いが浮上したが、日産は、調査でこれを証明する情報は得られなかったとしている。

他の企業統治リスク

仏紙ルモンドの12月の報道では、ルノーのボロレ前CEOが解任される数日前に、ゴーン被告に関連した日産の内部調査を巡って利益相反などを理由に疑義を呈していたことが明らかになっている。

ボロレ氏は日産取締役会宛の書簡で、ゴーン被告が行っていたとみられる不正金融取引と同様の取引に幹部級社員80人が関与した実態について特に懸念していると表明。社内事項が時として一部役員に報告されていなかったことも問題と指摘した。

日産はゴーン被告の内部調査にはいかなる問題もなかったとコメントしている。

検察にも批判の矛先

ゴーン被告の弁護団はこれまで、検察が日産とその従業員から押収した多数の電子データへのアクセスが拒否されたと訴えている。

日産が企業秘密や従業員の個人情報が含まれているとして懸念を示したため、検察は6000件のデータを不開示としてきた。

[東京 ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2020トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます



20200114issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2020年1月14日号(1月7日発売)は「台湾のこれから」特集。1月11日の総統選で蔡英文が再選すれば、中国はさらなる強硬姿勢に? 「香港化」する台湾、習近平の次なるシナリオ、日本が備えるべき難民クライシスなど、深層をレポートする。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英インフレ率目標の維持、労働市場の緩みが鍵=ハスケ

ワールド

ガザ病院敷地内から数百人の遺体、国連当局者「恐怖を

ワールド

ウクライナ、海外在住男性への領事サービス停止 徴兵

ワールド

スパイ容疑で極右政党議員スタッフ逮捕 独検察 中国
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 2

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の「爆弾発言」が怖すぎる

  • 3

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバイを襲った大洪水の爪痕

  • 4

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 8

    冥王星の地表にある「巨大なハート」...科学者を悩ま…

  • 9

    「なんという爆発...」ウクライナの大規模ドローン攻…

  • 10

    ネット時代の子供の間で広がっている「ポップコーン…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    攻撃と迎撃の区別もつかない?──イランの数百の無人…

  • 7

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 8

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 9

    ダイヤモンドバックスの試合中、自席の前を横切る子…

  • 10

    価値は疑わしくコストは膨大...偉大なるリニア計画っ…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

  • 10

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中