最新記事

日本政治

浮かび上がるポスト安倍問題 政治の安定失えば「日本売り」も

2019年11月21日(木)12時40分

11月21日、金融市場で「ポスト安倍」への警戒感が強まり始めた。写真は東証を訪れた安倍首相、2013年12月撮影(2019年 ロイター/Yuya Shino)

金融市場で「ポスト安倍」への警戒感が強まり始めた。安倍晋三首相続投の可能性が低下したとの見方が広まる中、次の本命候補が一向に浮上してこないためだ。政治の安定は日本市場の数少ない長所だけに、「後継者問題」がうまく解決されなければ、日本株売りの材料にされかねないと不安視されている。

「蜜月」の終わりを意識

第2次安倍政権が始まった2012年12月以来、日経平均株価は2.3倍に上昇した。投資家にとって安倍首相は歴代首相のなかでも「最も儲けさせてくれたうちの1人」だ。経済や物価はあまり伸びなかったが、株高を背景に支持率も安定、マーケットとの「蜜月」時代が続いてきた。

そのマーケットポジティブな政権の終わりを市場は意識し始めている。安倍首相の通算在任期間が歴代最長となり「記録」を樹立。念願の憲法改正にめどは立っていないが、来年の東京オリンピック・パラリンピックを終えた後に、引退すれば美しい花道となる。

安倍首相の自民党総裁任期は2021年9月。現在三選中であり、自民党党則では四選は禁止されている。四選を果たすためには、党大会で党則を変える必要があるが、来年3月8日に決まった党大会まで時間は乏しい。早期の解散・総選挙でもない限り、四選は難しいとの見方が強くなっている。

しかし、後継者の本命候補は依然見えない。「日本に詳しいポートフォリオマネージャーほど安倍首相の後に有力な後継者がいないとみている。誰になっても日本株のショートを考えると話す海外勢が多い」と、海外投資家動向に詳しい外資系証券の営業担当者は指摘する。

「政治の安定」を失う懸念

アベノミクスへの期待感は後退している。「次の時代を担う産業、企業が育てられなかったのが最大の失敗」(ニッセイ基礎研究所のチーフエコノミスト、矢嶋康次氏)というのが、マーケットの一般的な見方だ。政策継続への期待感が強いわけではない。

市場が警戒するのは、政治の安定が失われることだ。政治が不安定化すれば、政策の予見可能性が低下する。投資家は不透明感を嫌う。アベノミクスの評価が下がりながら、株高を保ってこられたのは、政治が安定していたことが大きい。

安倍政権は第2次から現在の第4次まで12月で7年に及ぶ。世界を見渡しても、先進国で数少ない長期政権だ。日本の首相は毎年変わると言われていたころとは様変わりで、現在の日本株に乗る数少ないプレミアムとなっている。

海外勢の日本株投資は現物と先物を合わせて12年11月のアベノミクス相場スタートから、累計で一時25兆円近く買い越したが、今年8月には売り越しに転じた。足下は買い越しているが、ほぼニュートラルに戻ったとみていいだろう。しかし、政治が不安定化すれば日本株ショートの可能性が強まる。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

韓国防空識別圏に中ロ軍機が一時侵入、戦闘機が緊急発

ワールド

中国首相「関税が世界の経済活動に深刻な影響」、保護

ビジネス

アングル:債券投資家が中期ゾーン主体にポジション修

ワールド

アングル:FRB次期議長、インフレと利下げ要求の板
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
特集:ジョン・レノン暗殺の真実
2025年12月16日号(12/ 9発売)

45年前、「20世紀のアイコン」に銃弾を浴びせた男が日本人ジャーナリストに刑務所で語った動機とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...かつて偶然、撮影されていた「緊張の瞬間」
  • 4
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 5
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 6
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 7
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 8
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 9
    中国の著名エコノミストが警告、過度の景気刺激が「…
  • 10
    「1匹いたら数千匹近くに...」飲もうとしたコップの…
  • 1
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした「信じられない」光景、海外で大きな話題に
  • 2
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価に与える影響と、サンリオ自社株買いの狙い
  • 3
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だから日本では解決が遠い
  • 4
    健康長寿の鍵は「慢性炎症」にある...「免疫の掃除」…
  • 5
    兵士の「戦死」で大儲けする女たち...ロシア社会を揺…
  • 6
    ホテルの部屋に残っていた「嫌すぎる行為」の証拠...…
  • 7
    キャサリン妃を睨む「嫉妬の目」の主はメーガン妃...…
  • 8
    戦争中に青年期を過ごした世代の男性は、終戦時56%…
  • 9
    人生の忙しさの9割はムダ...ひろゆきが語る「休む勇…
  • 10
    イスラエル軍幹部が人生を賭けた内部告発...沈黙させ…
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 3
    高速で回転しながら「地上に落下」...トルコの軍用輸送機「C-130」謎の墜落を捉えた「衝撃映像」が拡散
  • 4
    日本人には「当たり前」? 外国人が富士山で目にした…
  • 5
    「999段の階段」を落下...中国・自動車メーカーがPR…
  • 6
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 7
    「髪形がおかしい...」実写版『モアナ』予告編に批判…
  • 8
    【銘柄】オリエンタルランドが急落...日中対立が株価…
  • 9
    日本の「クマ問題」、ドイツの「問題クマ」比較...だ…
  • 10
    膝が痛くても足腰が弱くても、一生ぐんぐん歩けるよ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中