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韓国財閥系のLGとSKがEV電池で訴訟合戦 中国は漁夫の利狙う?

2019年11月30日(土)11時03分

ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が米国で生産する電気自動車(EV)用の電池を巡る数十億ドル規模の受注競争で昨年、韓国のSKイノベーション(SKI)は規模が上手の同国LGケム(LGC)を打ち負かした。写真はSKIのロゴ。ソウルで2017年2月撮影(2019年 ロイター/Kim Hong-Ji)

ドイツの自動車大手フォルクスワーゲン(VW)が米国で生産する電気自動車(EV)用の電池を巡る数十億ドル規模の受注競争で昨年、韓国のSKイノベーション(SKI)は規模が上手の同国LGケム(LGC)を打ち負かした。

SKIは今年3月には米ジョージア州コマースで、総工費17億ドルをかけて建設する電池工場の起工式を鳴り物入りで実施。そこから約200キロ離れたVWのテネシー州チャタヌーガ工場が、米国におけるVWのEV生産拠点となる。

しかし、LGCには腹案があった。

VWからの受注競争に敗れた上、ソウルの漢江を挟んでにらみ合う宿敵SKIに77人の従業員を奪われたLGCは4月になって、企業秘密を不正入手したとして米国でSKIを提訴した。

それから7カ月後。両社は電池の特許侵害を巡り米国で互いを提訴した。血で血を洗う確執の成り行き次第では、世界最大級の自動車メーカー数社のEV発売に混乱を来しかねない。

ロイターが確認した提訴書類によると、両社が互いに求めているのはテネシー州のVW工場で製造予定のSUV(スポーツ用多目的車)のほか、ゼネラル・モーターズ(GM)の「シボレー・ボルト」、フォード・モーターの各種ピックアプトラック、ジャガー・ランドローバーの「I―PACE」、VW傘下アウディの「e-tron」、起亜自動車の「Niro(ニロ)」といったEV用の電池の輸入および販売の停止だ。

韓国企業が米国でEV用電池を供給できるかどうかが、この係争に掛かっている。折しも自動車メーカー各社はEV用電池の需要急増を見据え、納入を確保しようと競って高額の契約を結んでいる。

「両社が和解しない限り、係争に敗れた方が致命傷を負うことになる。自動車メーカーにとっても手痛い事態だ」と蔚山科学技術大学校のCho Jae-phil教授は言う。

フォードの広報ジェニファー・フレーク氏はロイターへの電子書面で、LGCとSKIが法廷で争わずに対立を解消するのが望ましいとし、複数の電池メーカーが共存できるだけの需要があるはずだと指摘。「問題は承知している。当然のことながら、当社は自社の利益を守るために事業継続計画(BCP)を備えている」とした。

GMの広報パトリック・モリセー氏は、係争を承知しており、現時点でEV型シボレー・ボルトの生産への影響は予想していないと述べた。

起亜、ジャガー、VWの各社はコメントを控えた。

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