最新記事

米中貿易戦争

中国企業のウォール街からの締め出し、そのとき何が起きるのか

2019年10月3日(木)16時45分

Mark Schiefelbein/Pool via REUTERS/File Photo

複数の関係者によると、トランプ米政権が米国の証券取引所で中国企業に上場廃止を強制することを検討中だ。これは米中の緊張を一層高める上に、一部の大手中国企業を混乱の渦に陥れかねない。

上場廃止が実現するかどうかは分からない。ただ2人の関係者は、こうした考えは中国企業の対米投資を制限しようという幅広い取り組みの一環だと指摘した。また関係者の1人は、トランプ政権が中国企業の活動について安全保障上の懸念を強めていることが動機だと説明した。

◎中国企業の上場廃止はどれほど重大な意味を持つのか

市場参加者は、これほどの規模で上場廃止を強制するのは前代未聞になると話す。2月時点で、ナスダックとニューヨーク証券取引所(NYSE)、NYSE傘下のアメリカン証券取引所に上場している中国企業は150社強だ。

その中には巨大企業もいくつかある。例えば電子商取引のアリババ集団と京東商城、インターネット検索の百度の合計時価総額は5000億ドルを超える。

中国石油天然ガス(ペトロチャイナ)<601857.SS>、中国人寿保険<601628.SS>といった従来型産業の主要企業の一部も米国に上場している。

◎どんな影響を及ぼすか

企業の米上場意欲を阻害するとともに、ライバルの取引所にとっては中国企業を誘致する新しく魅力的な機会になる公算が大きい。

具体的には香港取引所やロンドン証券取引所、中国でハイテク新興企業向けに稼働を始めたばかりの科創板などが恩恵を受けるかもしれない。

ジェフリーズのアナリストチームは29日付ノートに「中国企業の上場廃止案は国際的な(米国預託証券)市場に徹底的な打撃を与え、世界中の資金の動脈としての米国の役割が損なわれるだろう」と記した。

新規株式公開(IPO)を手掛けるバンカーは、米国で中国企業の新規上場がしばらくストップすると予想する。こうした企業やアドバイザー、投資家は状況がはっきりするまで動かないからだ。トランプ大統領が来年再選を果たすかどうか見極める向きも出てくるのではないか。

上場廃止をどうやって実施できるかも分かっていない。

話が進んでいくなら、米国に上場する中国企業は、株主から自社株を買い戻す算段を考えなければならなくなる。1つの方法は、別の取引所に上場し、株主に米国上場株と引き換えに新株を交付することだろう、とある株式資本市場バンカーは話した。ただこの計画は株主と企業の双方にとっていくつかのリスクを伴い、同時に手続き面でも相当な難しさがあるという。


20191008issue_cover200.jpg ※10月8日号(10月1日発売)は、「消費増税からマネーを守る 経済超入門」特集。消費税率アップで経済は悪化する? 年金減額で未来の暮らしはどうなる? 賃貸、分譲、戸建て......住宅に正解はある? 投資はそもそも万人がすべきもの? キャッシュレスはどう利用するのが正しい? 増税の今だからこそ知っておきたい経済知識を得られる特集です。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

英中銀が金利据え置き、量的引き締めペース縮小 長期

ワールド

台湾中銀、政策金利据え置き 成長予想引き上げも関税

ワールド

UAE、イスラエルがヨルダン川西岸併合なら外交関係

ワールド

シリア担当の米外交官が突然解任、クルド系武装組織巡
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が尊敬する日本の小説36
特集:世界が尊敬する日本の小説36
2025年9月16日/2025年9月23日号(9/ 9発売)

優れた翻訳を味方に人気と評価が急上昇中。21世紀に起きた世界文学の大変化とは

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「日本を見習え!」米セブンイレブンが刷新を発表、日本では定番商品「天国のようなアレ」を販売へ
  • 2
    中国は「アメリカなしでも繁栄できる」と豪語するが...最新経済統計が示す、中国の「虚勢」の実態
  • 3
    1年で1000万人が死亡の可能性...迫る「スーパーバグ」感染爆発に対抗できる「100年前に忘れられた」治療法とは?
  • 4
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 5
    燃え上がる「ロシア最大級の製油所」...ウクライナ軍…
  • 6
    【クイズ】世界で最も「リラックスできる都市」が発…
  • 7
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 8
    中国山東省の住民が、「軍のミサイルが謎の物体を撃…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 1
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影...目覚めた時の「信じがたい光景」に驚きの声
  • 2
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれば当然」の理由...再開発ブーム終焉で起きること
  • 3
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサイルが命中、米政府「機密扱い」の衝撃映像が公開に
  • 4
    【クイズ】次のうち、飲むと「蚊に刺されやすくなる…
  • 5
    科学が解き明かす「長寿の謎」...100歳まで生きる人…
  • 6
    「二度見した」「小石のよう...」マッチョ俳優ドウェ…
  • 7
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 8
    【クイズ】世界で1番「島の数」が多い国はどこ?
  • 9
    「なんて無駄」「空飛ぶ宮殿...」パリス・ヒルトン、…
  • 10
    観光客によるヒグマへの餌付けで凶暴化...74歳女性が…
  • 1
    「4針ですかね、縫いました」日本の若者を食い物にする「豪ワーホリのリアル」...アジア出身者を意図的にターゲットに
  • 2
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?
  • 3
    「まさかの真犯人」にネット爆笑...大家から再三「果物泥棒」と疑われた女性が無実を証明した「証拠映像」が話題に
  • 4
    信じられない...「洗濯物を干しておいて」夫に頼んだ…
  • 5
    「最悪」「悪夢だ」 飛行機内で眠っていた女性が撮影…
  • 6
    「レプトスピラ症」が大規模流行中...ヒトやペットに…
  • 7
    「あなた誰?」保育園から帰ってきた3歳の娘が「別人…
  • 8
    「中野サンプラザ再開発」の計画断念、「考えてみれ…
  • 9
    「我々は嘘をつかれている...」UFOらしき物体にミサ…
  • 10
    プール後の20代女性の素肌に「無数の発疹」...ネット…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中