経済を超え政治思想の不信へ 米中貿易協議が「期待薄」な理由
対中強硬姿勢で結束
米政界でトランプ氏の掲げる多くの政策は不人気だが、中国に対する強硬姿勢だけは圧倒的な支持を得ている。ほとんどの問題で対立する与党・共和党と野党・民主党も、中国に抜本的な変革が必要という点では足並みが一致する。
来年の大統領選で民主党候補が勝利しても、中国との関係が修復されそうにはない。12日に行われた同党の大統領候補による討論会では、中国の貿易慣行について「腐敗」や「盗み」といった言葉が飛び交った。
USTRの元法務顧問でホーガン・ロヴェルズ法律事務所のパートナー、ウォーレン・マルヤマ氏は、対中国政策で「構造的な変化が起きている」と指摘。中国は市場経済へ向けた改革の途上にあり、やがて西側のような国になるとの古い考えは事実上消滅し、中国により厳しい政策を打ち出すことには超党派の後押しがあると付け加えた。
妥協は困難
トランプ氏は、自ら導入した関税も一因となって、経済が悪化して景気後退に陥るリスクにさらされている。ところが主要な支持者は今のところ離反していない。
中国に駐在する米企業幹部は、中国政府が貿易戦争はトランプ氏の政治的な支持の痛手になると考えているなら、計算違いをしていると警告する。ある幹部は「どちらかと言えば、貿易戦争は企業界を一致団結させている」と述べた。
元米商務省高官で米中ビジネス協議会を率いているクレイグ・アレン氏は、中国によるスパイ行為やハッキング、知的財産の窃取などへの懸念から、米国のハイテクセクターは永遠に中国と距離を置くかもしれないと警告した。
一方で中国も10月1日の建国70周年を前に、景気減速に悩まされている。ただ中国政府内では、トランプ氏の貿易戦争に対する姿勢に一貫性がないことで、習近平氏は景気減速の原因を国内政策ではなく、米国の関税引き上げに帰することができているとの見方が多い。
習氏は今月、共産党の指導体制や中国の主権、安全保障へのリスクや試練、さらに同国の核心的利益を脅かすいかなる要素とも「断固闘う」よう党幹部に訓示しており、妥協の余地は見出せない。
(Michael Martina、Andrea Shalal記者)


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