最新記事

貿易戦争

経済を超え政治思想の不信へ 米中貿易協議が「期待薄」な理由

2019年9月19日(木)11時07分

対中強硬姿勢で結束

米政界でトランプ氏の掲げる多くの政策は不人気だが、中国に対する強硬姿勢だけは圧倒的な支持を得ている。ほとんどの問題で対立する与党・共和党と野党・民主党も、中国に抜本的な変革が必要という点では足並みが一致する。

来年の大統領選で民主党候補が勝利しても、中国との関係が修復されそうにはない。12日に行われた同党の大統領候補による討論会では、中国の貿易慣行について「腐敗」や「盗み」といった言葉が飛び交った。

USTRの元法務顧問でホーガン・ロヴェルズ法律事務所のパートナー、ウォーレン・マルヤマ氏は、対中国政策で「構造的な変化が起きている」と指摘。中国は市場経済へ向けた改革の途上にあり、やがて西側のような国になるとの古い考えは事実上消滅し、中国により厳しい政策を打ち出すことには超党派の後押しがあると付け加えた。

妥協は困難

トランプ氏は、自ら導入した関税も一因となって、経済が悪化して景気後退に陥るリスクにさらされている。ところが主要な支持者は今のところ離反していない。

中国に駐在する米企業幹部は、中国政府が貿易戦争はトランプ氏の政治的な支持の痛手になると考えているなら、計算違いをしていると警告する。ある幹部は「どちらかと言えば、貿易戦争は企業界を一致団結させている」と述べた。

元米商務省高官で米中ビジネス協議会を率いているクレイグ・アレン氏は、中国によるスパイ行為やハッキング、知的財産の窃取などへの懸念から、米国のハイテクセクターは永遠に中国と距離を置くかもしれないと警告した。

一方で中国も10月1日の建国70周年を前に、景気減速に悩まされている。ただ中国政府内では、トランプ氏の貿易戦争に対する姿勢に一貫性がないことで、習近平氏は景気減速の原因を国内政策ではなく、米国の関税引き上げに帰することができているとの見方が多い。

習氏は今月、共産党の指導体制や中国の主権、安全保障へのリスクや試練、さらに同国の核心的利益を脅かすいかなる要素とも「断固闘う」よう党幹部に訓示しており、妥協の余地は見出せない。

(Michael Martina、Andrea Shalal記者)

[北京/ワシントン ロイター]


トムソンロイター・ジャパン

Copyright (C) 2019トムソンロイター・ジャパン(株)記事の無断転用を禁じます

202404300507issue_cover150.jpg
※画像をクリックすると
アマゾンに飛びます

2024年4月30日/5月7日号(4月23日発売)は「世界が愛した日本アニメ30」特集。ジブリのほか、『鬼滅の刃』『AKIRA』『ドラゴンボール』『千年女優』『君の名は。』……[PLUS]北米を席巻する日本マンガ

※バックナンバーが読み放題となる定期購読はこちら


今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

米財務省、中長期債の四半期入札規模を当面据え置き

ビジネス

FRB、バランスシート縮小ペース減速へ 国債月間最

ワールド

米、民間人保護計画ないラファ侵攻支持できず 国務長

ビジネス

クアルコム、4─6月業績見通しが予想超え スマホ市
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロシア空軍基地の被害規模

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    ロシアの大規模ウクライナ空爆にNATO軍戦闘機が一斉起動

  • 4

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 5

    ポーランド政府の呼び出しをロシア大使が無視、ミサ…

  • 6

    米中逆転は遠のいた?──2021年にアメリカの76%に達し…

  • 7

    「レースのパンツ」が重大な感染症を引き起こす原因に

  • 8

    パレスチナ支持の学生運動を激化させた2つの要因

  • 9

    大卒でない人にはチャンスも与えられない...そんなア…

  • 10

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 3

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドローンを「空対空ミサイルで撃墜」の瞬間映像が拡散

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    どの顔が好き? 「パートナーに求める性格」が分かる…

  • 6

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    中国の最新鋭ステルス爆撃機H20は「恐れるに足らず」…

  • 9

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 10

    「2枚の衛星画像」が伝える、ドローン攻撃を受けたロ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 6

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 7

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    一瞬の閃光と爆音...ウクライナ戦闘機、ロシア軍ドロ…

  • 10

    「誰かが嘘をついている」――米メディアは大谷翔平の…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中