最新記事

ビジネス

フランス検察、電通のパートナー企業を捜査 東京五輪含めスポーツビジネスの汚職にメス

2019年8月28日(水)17時26分

東京港区にある電通本社。8月9日撮影(2019年 ロイター/Kim Kyung-Hoon)

国際スポーツビジネスを巡る汚職疑惑を捜査しているフランス検察当局は、摘発したスポンサー料の横領事件で、日本の大手広告代理店、電通のパートナーであるアスレティックス・マネジメント・アンド・サービシズ(AMS、本社スイス)が横領に利用された取引で「中心的かつ不可欠な役割」を果たしていたと判断、スイス当局にAMS本社の捜索と証拠の押収を要請した。ロイターが閲覧した文書と、捜査状況を知る関係者の話で明らかになった。

この事件では、仏当局がスポンサーや放映権の契約に関連した横領の罪などで国際陸上競技連盟(国際陸連)のラミン・ディアク前会長と彼の息子のパパマッサタ・ディアク氏を起訴している。捜査は今年6月に終結し、公判が行われる予定だ。

電通とAMSは国際陸連が主催する大会のマーケティングと放映などの権利の取り扱いについて協力している。フランス検察当局は両社に不正行為があったとの判断はしていない。

仏当局はさらに、五輪と世界陸上競技選手権大会(世界陸上)に絡む贈収賄疑惑についても捜査を続けており、関係者の1人は、電通とAMSの役割にも調べが及ぶ可能性があると指摘した。日本側は否定しているが、仏当局は、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会が国際オリンピック委員会(IOC)の委員だったディアク前会長とその息子に賄賂を支払った疑いがあるとみている。

仏がスイスへの捜査協力を要請

ディアク氏らに対する89ページに及ぶ起訴状(ルノー・バン・リュインベック判事が署名)は、パパマッサタ氏によるスポンサー資金の横領について、AMSが「その過程で中心的かつ不可欠な役割」を果たした、としている。起訴状によると、AMSはパパマッサタ氏に世界のいくつかの地域でのマーケティング権と放映権を譲渡、同社が協力した取引の中で、パパマッサタ氏が「途方もない」手数料を着服したとしている。

ロイターはAMSに詳細な質問を送ったが、同社は回答を拒否した。電通は、起訴状の内容を把握しておらず、この件についてフランスや日本の当局からの質問や協力要請もないとしている。電通広報局の河南周作氏はロイターに対し、起訴状の詳細については同社は何も知らないと文書で回答した。

仏捜査当局はバン・リュインベック判事が2018年5月に署名した捜査協力要請をスイス側に送り、ルツェルンにあるAMS事務所の家宅捜索や同社幹部への聴取を求めたが、現在に至るまで、スイス側は要請に応じていない。この捜査に詳しい関係者の証言およびロイターが閲覧した司法支援要請書で明らかになった。

フランスによるスイスへの捜査協力の依頼やAMSに言及した起訴状の詳細が明らかになったのは初めて。こうした事実は、仏当局が4年間の捜査を踏まえ、国際陸連のガバナンスやロシアによるドーピング隠蔽問題だけでなく、コンサルティングやスポンサー契約を通じてディアク父子が賄賂を手に入れていたかどうかの解明へ動いていることを示している。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

スペイン首相が辞任の可能性示唆、妻の汚職疑惑巡り裁

ビジネス

米国株式市場=まちまち、好業績に期待 利回り上昇は

ビジネス

フォード、第2四半期利益が予想上回る ハイブリッド

ビジネス

NY外為市場=ドル一時155円台前半、介入の兆候を
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 7

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 8

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 9

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 10

    イランのイスラエル攻撃でアラブ諸国がまさかのイス…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた「身体改造」の実態...出土した「遺骨」で初の発見

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「毛むくじゃら乳首ブラ」「縫った女性器パンツ」の…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中