最新記事

雇用

政府と経済界「ジョブ型雇用」の議論活発化 IT化遅れで国際競争力低下の危機感

2019年4月15日(月)15時00分

年功序列や終身雇用という日本型雇用を転換し、仕事内容に応じた能力・スキルを重視する「ジョブ型」雇用の導入に向け、政府内で議論が始まった。写真は都内で2014年12月撮影(2019年 ロイター/Issei Kato)

年功序列や終身雇用という日本型雇用を転換し、仕事内容に応じた能力・スキルを重視する「ジョブ型」雇用の導入に向け、政府内で議論が始まった。進行するIT化の下で高度人材が不足する一方、専門知識に乏しい中間層の所得低下が目立ち、このままでは日本経済の競争力が国際的に低下しかねないとの危機感があるためだ。

ただ、ジョブ型への急速な転換は、社会的な動揺を生じかねず、政府は短期的な取り組みとして、労働者の能力底上げを図る再教育の仕組み作りを急ぎ、「氷河期世代」の職業訓練と就職支援を今年夏までに具体化する。

ジョブ型に積極的な経団連

経団連の中西宏明会長は、ジョブ型雇用と人材投資について「今回の提案は働き方改革フェーズ2と捉えている」と3月27日の経済財政諮問会議で熱弁をふるった。

中西会長が提唱する「ジョブ型雇用」は、2018年秋の経団連の雇用政策に関する報告書でも取り上げている。年功序列ではなく、責任や職務内容を明確に定めた雇用契約を結び、専門性や責任等職務のレベルに応じて処遇し、必要な人材の確保を目指している。

特に次世代通信規格5G商用化も迫り、人工知能(AI)やIoT(モノをインターネットで結ぶ)など先端技術を駆使できる人材の不足に産業界の焦りは強い。

今年の春闘でトヨタ自動車は、組合員一律の賃上げから脱皮し、個人の役割に応じた賃金体系への転換姿勢を打ち出した。

他方、中西氏とともに諮問会議・民間議員を務める柳川範之・東京大学大学院教授は、産業界とは違った問題意識を示す。

諮問会議の中で「自動化、AI化の進展の中で低所得層が仕事を失う、あるいは中間所得層が低所得に陥らないよう、人材の能力底上げが圧倒的に重要なポイントになる」と発言。ロイターの取材に対し「再教育や就職支援制度を確保した上でのジョブ型導入だと思っている」と述べた。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

石破首相「双方の利益になるよう最大限努力」、G7で

ワールド

米中貿易枠組み合意、軍事用レアアース問題が未解決=

ワールド

独仏英、イランに核開発巡る協議を提案 中東の緊張緩

ワールド

イスラエルとイランの応酬続く、トランプ氏「紛争終結
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:非婚化する世界
特集:非婚化する世界
2025年6月17日号(6/10発売)

非婚化・少子化の波がアメリカもヨーロッパも襲う。世界の経済や社会福祉、医療はどうなる?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    「タンパク質」より「食物繊維」がなぜ重要なのか?...「がん」「栄養」との関係性を管理栄養士が語る
  • 2
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高にかっこいい」とネット絶賛 どんなヘアスタイルに?
  • 3
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波でパニック...中国の輸出規制が直撃する「グローバル自動車産業」
  • 4
    サイコパスの顔ほど「魅力的に見える」?...騙されず…
  • 5
    林原めぐみのブログが「排外主義」と言われてしまう…
  • 6
    メーガン妃とキャサリン妃は「2人で泣き崩れていた」…
  • 7
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 8
    さらばグレタよ...ガザ支援船の活動家、ガザに辿り着…
  • 9
    ハルキウに「ドローン」「ミサイル」「爆弾」の一斉…
  • 10
    若者に大不評の「あの絵文字」...30代以上にはお馴染…
  • 1
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の瞬間...「信じられない行動」にネット驚愕
  • 2
    大阪万博は特に外国人の評判が最悪...「デジタル化未満」の残念ジャパンの見本市だ
  • 3
    「セレブのショーはもう終わり」...環境活動家グレタらが乗ったガザ支援船をイスラエルが拿捕
  • 4
    「サイドミラー1つ作れない」レアアース危機・第3波で…
  • 5
    ブラッド・ピット新髪型を「かわいい」「史上最高に…
  • 6
    ファスティングをすると、なぜ空腹を感じなくなるの…
  • 7
    今こそ「古典的な」ディズニープリンセスに戻るべき…
  • 8
    アメリカは革命前夜の臨界状態、余剰になった高学歴…
  • 9
    右肩の痛みが告げた「ステージ4」からの生還...「生…
  • 10
    脳も体も若返る! 医師が教える「老後を元気に生きる…
  • 1
    日本の「プラごみ」で揚げる豆腐が、重大な健康被害と環境汚染を引き起こしている
  • 2
    【定年後の仕事】65歳以上の平均年収ランキング、ワースト2位は清掃員、ではワースト1位は?
  • 3
    日本はもう「ゼロパンダ」でいいんじゃない? 和歌山、上野...中国返還のその先
  • 4
    一瞬にして村全体が消えた...スイスのビルヒ氷河崩壊…
  • 5
    庭にクマ出没、固唾を呑んで見守る家主、そして次の…
  • 6
    大爆発で一瞬にして建物が粉々に...ウクライナ軍「Mi…
  • 7
    「ママ...!」2カ月ぶりの再会に駆け寄る13歳ラブラ…
  • 8
    あなたも当てはまる? 顔に表れるサイコパス・ナルシ…
  • 9
    ドローン百機を一度に発射できる中国の世界初「ドロ…
  • 10
    【クイズ】EVの電池にも使われる「コバルト」...世界…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中