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「紙なし、窓口もなし」 三菱UFJ、20年後リアル店舗ゼロをにらんだ新型店の実力度

2019年2月10日(日)11時33分
藤原宏成(東洋経済 記者) *東洋経済オンラインからの転載

進む消費者の銀行店舗離れ

今後の展開としては、大阪・心斎橋で「MUFG NEXT」の2店舗目を4月にオープン予定。学芸大学駅前支店とは異なり、窓口を備えたフルバンク型の店舗だ。形式の異なる両店舗での試行検証を経た後、2023年度をメドに「MUFG NEXT」を軸としてコンサルティングに特化した店舗や、銀・信・証一体型などの次世代店舗を70~100店舗まで拡大予定だ。

今回の次世代店舗からもわかるように、銀行の店舗は大きな変化が訪れている。背景には、消費者の行動変化がある。三菱UFJの場合、店舗への来店客数が過去10年間で4割も減少した。一方でインターネットバンキングの利用者は5年で4割増加している。取引の件数では、ネットでの取引が店頭での取引を上回っている。

コスト面でも圧力がかかる。個人や中小企業向けのリテール部門は、銀行にとって基盤とも言えるビジネス。しかし、多くの行員や店舗を抱えることによるコストは業績の重しになっている。国内では低金利環境が続く中、収益性の改善にはリテール改革が急務。フィンテックによる事務量削減や店舗外ATMの相互開放など、運営の効率化を意識した取り組みが続いている。

リテール改革の柱・店舗改革

中でも店舗改革は、リテール改革の大きな柱となる。三菱UFJは現在515カ所ある店舗を2023年度までに2割減らす計画を発表している。みずほフィナンシャルグループも同様に約500カ所ある店舗を2024年度までに100カ所減らす計画となっている。統廃合だけではなく、より効率的な店舗運営として次世代店舗化も求められるようになった。

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現金を扱う業務は基本的にATMで行い、顧客スペースは資産運用の相談などに割いている。三井住友銀行の中野坂上店(撮影:田所千代美)

三井住友フィナンシャルグループは、2019年度までに国内の430店舗すべてを次世代型店舗に切り替える方針だ。個人専用店舗や予約制店舗など複数の形態の店舗を展開する。「GINZA SIX」内の銀座支店や中野坂上支店などすでに移行は進んでいる。行員が顧客と隣り合って相談に応じる「寄添い型ブース」などコンサルティングに重点を置く。

みずほは銀・信・証一体型を追求

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銀行と信託、証券の窓口を一つのフロアに集中させた、みずほフィナンシャルグループの吉祥寺支店(撮影:尾形文繁)

みずほは銀行と信託、証券の各業務を一体化した店舗を拡大している。現在は店舗全体の4割程度だが、2020年度までに全拠点を一体型店舗にする方針だ。

次世代店舗化にあたって、デジタル化、コンサルティング特化、銀行と信託、証券業務を一体化した店舗といった方向性は各社に共通している。しかし、各社の1号店をみると、どの要素に比重を置くのか、各社の戦略は異なっているように見える。今までどの銀行の店舗に行っても同じようだったことも、今後はそうでなくなる可能性が高い。

三菱UFJは2018年6月の株主総会で、20年後にはリアルの店舗はなくなっているという見方を示した。今回の新コンセプト店は、銀行の店舗がなくなるまでの過渡期の状態と言える。本当にそんな未来がやってくるのか定かではないが、銀行の経営とサービスの両面において、店舗も1つの差別化要素となってくることは間違いない。

※当記事は「東洋経済オンライン」からの転載記事です。
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