最新記事

世界経済

銅の下落に世界の投資家が注目する訳

1ポンド当たり3ドルを下回った銅価格は、投資家に大恐慌並みの衝撃を与えている

2014年4月9日(水)15時38分
マイケル・モラン

先行指標 銅は目立たないが経済のあらゆるところに使われている Nicolas Vallejos Photography and Design-Flickr/Getty Images

 銅の価格が下落している。そう言われても、多くの人は何の感想も浮かばないだろう。銅で連想するものと言えば1セント硬貨くらいのものだが、それすら厳密には正しいと言い切れない。82年以降の1セント硬貨は97.5%が亜鉛で、銅は表面メッキの2.5%しか使われてない。

 だが経済の専門家は銅に熱い視線を送っている。彼らのブログは今や銅の話題でもちきりだ。1ポンド(約454グラム)当たり3ドルを下回った銅価格は、彼らに大恐慌並みの衝撃を与えている。11年にスタンダード&プアーズ(S&P)が米国債を格下げしたときや、08年のリーマン・ショック時の衝撃にも匹敵する。

 リーマン・ショック級の危機が世界に迫っている──というのは、おそらく言い過ぎだ。それでも、経済の専門家たちが銅に注目するのにはそれなりの理由がある。

 銅は、現代社会で生産されているほとんどの製品に使用される。少し例を挙げるだけでも発電、建築、配線、配管、空調、通信、電子回路基板、ベアリング、モーター、自由の女神像など枚挙にいとまがない。

 そのため銅は、世界経済の動向と密接に関わっている。銅市場を見れば、グローバル経済の行く末が占えるというわけだ。

 だが近頃の銅の下落は、経済学者や市場のプロにとっても不可解な部分がある。下落の原因としてよく挙げられるのは、3月に中国経済に関する悪いニュースが相次いだこと。世界最大の銅の消費国で需要が弱まったことで、多くの在庫が倉庫に眠っているというのだ。

金融取引の「道具」だった

 一方で、銅市場は以前から典型的なバブル状態にあったとする声もある。中国の投資家はゼロ金利下にある米ドルを借り入れて銅を輸入し、その銅を売却して得た人民元を高金利で運用。金利差で儲けてドルの借金を返済する、という投機的な取引を多く行ってきた。

 つまり銅は実需に基づいて輸入されるのではなく、金融取引の「道具」に使われただけ。そうした銅は製品に使われず、倉庫に保管されているだけの状態になる(その結果、銅は供給不足になり、価格は急騰した)。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

MAGA派グリーン議員、トランプ氏発言で危険にさら

ビジネス

テスラ、米生産で中国製部品の排除をサプライヤーに要

ビジネス

米政権文書、アリババが中国軍に技術協力と指摘=FT

ビジネス

エヌビディア決算にハイテク株の手掛かり求める展開に
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界最高の投手
特集:世界最高の投手
2025年11月18日号(11/11発売)

日本最高の投手がMLB最高の投手に──。全米が驚愕した山本由伸の投球と大谷・佐々木の活躍

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 2
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生まれた「全く異なる」2つの投資機会とは?
  • 3
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃度を増やす「6つのルール」とは?
  • 4
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 5
    レアアースを武器にした中国...実は米国への依存度が…
  • 6
    「中国人が10軒前後の豪邸所有」...理想の高級住宅地…
  • 7
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 8
    反ワクチンのカリスマを追放し、豊田真由子を抜擢...…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    悪化する日中関係 悪いのは高市首相か、それとも中国…
  • 1
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後」の橋が崩落する瞬間を捉えた「衝撃映像」に広がる疑念
  • 2
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披露目会で「情けない大失態」...「衝撃映像」がSNSで拡散
  • 3
    東京がニューヨークを上回り「世界最大の経済都市」に...日本からは、もう1都市圏がトップ10入り
  • 4
    「死ぬかと思った...」寿司を喉につまらせた女性を前…
  • 5
    【写真・動画】「全身が脳」の生物の神経系とその生態
  • 6
    【銘柄】ソニーグループとソニーFG...分離上場で生ま…
  • 7
    『プレデター: バッドランド』は良作?駄作?...批評…
  • 8
    筋肉の正体は「ホルモン」だった...テストステロン濃…
  • 9
    「イケメンすぎる」...飲酒運転で捕まった男性の「逮…
  • 10
    ドジャースの「救世主」となったロハスの「渾身の一…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    一瞬にして「巨大な橋が消えた」...中国・「完成直後…
  • 5
    「不気味すぎる...」カップルの写真に映り込んだ「謎…
  • 6
    【写真・動画】世界最大のクモの巣
  • 7
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 8
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読…
  • 9
    まるで老人...ロシア初の「AIヒト型ロボット」がお披…
  • 10
    今年、記録的な数の「中国の飲食店」が進出した国
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中