最新記事

中国

ユダヤ教の聖典はビジネス虎の巻?

2011年2月9日(水)13時47分
アイザック・ストーン・フィッシュ(北京)

誤解が生み出したブーム

 そうした流れを受けて、中国の官営メディアは、毛沢東へのインタビューで知られるジャーナリストのイスラエル・エプスタインらユダヤ人をもてはやすようになった。05年に亡くなったエプスタインの葬儀には、胡錦濤(フー・チンタオ)国家主席や温家宝(ウエン・チアパオ)首相も参列している。

 中国以外のユダヤ教専門家にしてみれば、タルムードをビジネスのハウツー本として捉えるのはあり得ない話だ。

 契約法や利子に関する記述があるのは確かだが、蓄財のガイドブックではないと、ユダヤ教神学院(ニューヨーク)のエリーザー・ダイヤモンド准教授は語る。「ある中国人から『金持ちになりたいので、学院の蓄財コースで教えている内容を知りたい』という手紙を受け取ったことがある。言うまでもないが、ユダヤ教神学院に大金を稼ぐ人はあまりいない」

 タルムードをビジネスの奥義が学べる文献と見なす動きは無害とは言えない。関連本のうち2冊の表紙には「タルムードを読まない限り誰もユダヤ人を打ち負かせない」という、投資家ジョージ・ソロスの名言と称する文章が躍る。「ユダヤ人は弁護がうまいから、弁護士を雇うならユダヤ人にすると言う反ユダヤ主義者が世界中にいる」と、ダイヤモンドは懸念する。

 ユダヤ人に会った経験がないという韓は、自身のユダヤ人観が正しいかは分からないと断りつつも、「ユダヤ人はカネそのものはよくも悪くもないと理解している」と主張する。著書は「中国ビジネスという暗い部屋を照らす」ものらしい。

 韓の不満は、『タルムード解読』が自分の人生を変えたとの感想を語る実業家が現れていないこと。「この手の書籍があり過ぎるのかもしれない」

[2011年1月12日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

北朝鮮製武器輸送したロシア船、中国の港に停泊 衛星

ビジネス

大和証G、1―3月期経常利益は84%増 「4月も順

ビジネス

ソフトバンク、9月末の株主対象に株式10分割 株主

ビジネス

ゴールドマン・サックス証券、持田前社長の後任に居松
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴らす「おばけタンパク質」の正体とは?

  • 3

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗衣氏への名誉棄損に対する賠償命令

  • 4

    心を穏やかに保つ禅の教え 「世界が尊敬する日本人100…

  • 5

    マイナス金利の解除でも、円安が止まらない「当然」…

  • 6

    ワニが16歳少年を襲い殺害...遺体発見の「おぞましい…

  • 7

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 8

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 9

    中国のロシア専門家が「それでも最後はロシアが負け…

  • 10

    ケイティ・ペリーの「尻がまる見え」ドレスに批判殺…

  • 1

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なない理由が明らかに

  • 2

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 5

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 6

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 7

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 8

    NewJeans日本デビュー目前に赤信号 所属事務所に親…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    「誹謗中傷のビジネス化」に歯止めをかけた、北村紗…

  • 1

    人から褒められた時、どう返事してますか? ブッダが説いた「どんどん伸びる人の返し文句」

  • 2

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 3

    88歳の現役医師が健康のために「絶対にしない3つのこと」目からうろこの健康法

  • 4

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の…

  • 5

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈…

  • 6

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中