米金融緩和で中国に増殖する「海豚族」
さらなる世界的危機が訪れる?
日本も韓国も台湾も、投機資金の流入に対処し、自国通貨の相場を低く抑えようと必死だ。「4カ国・地域の中央銀行は、外国からの投機資金への対応に追われている。あらゆる手を使って対応しようとするだろう」と殷は言う。
それはつまり、各国の中銀が大規模な介入も辞さないということだ。台湾の中銀は毎日のように大規模な台湾ドル売り介入を行っている。おかげで世界第4位の外貨準備(3800億ドル超)はさらに増加しつつある。
台湾と韓国は短期の投機をやりにくくするための資本規制にも乗り出した。日本も大量の円売り介入を行なう用意が出来ている。
そして中国は従来の為替政策を今後も踏襲するだろう。実際、市場介入はさらに拡大すると見られているし、利上げがさらなる投機資金を呼び込めば、外貨準備高は今の2兆6500億ドルからさらに膨らむ見通しだ。
つまりバラク・オバマ米大統領やアメリカ寄りのIMF(国際通貨基金)が何と言おうと、中国は人民元を切り上げてアメリカを喜ばせる気は毛頭ないということだ。
為替相場をめぐる米中の対立について、エコノミストの謝国忠(シエ・クオチョン)は非常に悲観的な見方をしている。彼は先ごろ「チャイナ・インターナショナル・ビジネス」誌上で、自国通貨を安く誘導しようとする政策の応酬は世界経済に大きな損害をもたらしていると警告した。
「世界は高インフレと政治的不安定へと向かっており、さらなる世界的危機が訪れるのは時間の問題だ」
私たちは通貨戦争のまっただ中にいるということか。イルカ族の増加はまだ始まりに過ぎない。