最新記事

電子ブック

キンドルで売れまくる「電子エロ本」の落とし穴

2010年10月5日(火)17時56分
ジェームズ・レドベター

 ポルノ業界の裏側を描いた映画『ブギーナイツ』や、ポルノ画像のネット配信を手がけたビジネスマンが主人公の『ミドル・メン』を見た人にとっては、この組み合わせは想定の範囲内だろう。活版印刷や映画からケーブルテレビ、VHS、DVD、インターネット、携帯電話まで新たなコミュニケーション手段が爆発的に普及する際には常に、ポルノコンテンツの急増か、少なくともポルノ業界の参加という後押しがある(最大の例外はラジオだろう)。

 ポルノと電子書籍端末の組み合わせには、他にも注目すべき側面がある。映像ではなく言葉を使った男性向けポルノはニッチな市場だが、電子書籍端末の普及によって、これまで表に出なかった潜在的需要が喚起されるかもしれない。また、かつてネットの登場が書店でエロ本を買う気恥ずかしさを解消してくれたように、今度は電子書籍リーダーが、配偶者や家族にエロ本を発見される心配を消してくれる。

アマゾンを待ち受ける保守派の抵抗

 もう一つ、アマゾンが電子ポルノと同一視されて平気でいられるかという問題もある。キンドルによって、アマゾンはエロ本の単なる販売者ではなくなり、販売促進者かつ製造者になる。ポルノ系電子ブックの多くは、アマゾンが出版している。他社の電子書籍も「アマゾン・デジタル・サービス」が販売代理店となっており、売り上げのかなりの割合がアマゾンの懐に入る。

 アダルト関連のコンテンツを厳密に検閲するアップル社に批判的な人は、アマゾンのオープンさを歓迎するかもしれない。また、エロ小説を無料配布するという集客戦略は、キンドルの売り上げを伸ばす効果的な方法なのかもしれない。
 
 だが、格安な電子ポルノを普及させる道を追求し続ければ、いずれキリスト教団体や保守派の抵抗に合うはずだ。そのとき、アマゾンは決断を迫られる。電子ポルノの無料配布によってキンドルの販売を促進することを優先させるのか、それとも『ショッキングな体位』がアマゾンの売り上げランキング1位を占めることで、電子書籍端末の価値が損なわれるのを避けるべきか、という判断だ。

Slate.com特約)

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

中国主席、APEC首脳会議で多国間貿易保護訴え 日

ビジネス

米国株式市場・序盤=ナスダック1.5%高、アップル

ビジネス

利下げでFRB信認揺らぐ恐れ、インフレリスク残存=

ビジネス

ECB、金利変更の選択肢残すべき リスクに対応=仏
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:高市早苗研究
特集:高市早苗研究
2025年11月 4日/2025年11月11日号(10/28発売)

課題だらけの日本の政治・経済・外交を初の女性首相はこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 5
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 6
    【クイズ】1位は「蚊」...世界で「2番目に」人間を殺…
  • 7
    海に響き渡る轟音...「5000頭のアレ」が一斉に大移動…
  • 8
    必要な証拠の95%を確保していたのに...中国のスパイ…
  • 9
    【クイズ】12名が死亡...世界で「最も死者数が多い」…
  • 10
    【クイズ】日本でツキノワグマの出没件数が「最も多…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】クマ被害が相次ぐが...「熊害」の正しい読み方は?
  • 4
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」は…
  • 5
    【話題の写真】自宅の天井に突如現れた「奇妙な塊」…
  • 6
    中国レアアース輸出規制強化...代替調達先に浮上した…
  • 7
    【ウクライナ】要衝ポクロウシクの攻防戦が最終局面…
  • 8
    超大物俳優、地下鉄移動も「完璧な溶け込み具合」...…
  • 9
    女性の後を毎晩つけてくるストーカー...1週間後、雨…
  • 10
    熊本、東京、千葉...で相次ぐ懸念 「土地の買収=水…
  • 1
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」はどこ?
  • 2
    英国で「パブ離れ」が深刻化、閉店ペースが加速...苦肉の策は「日本では当たり前」の方式だった
  • 3
    【クイズ】ヒグマの生息数が「世界で最も多い国」はどこ?
  • 4
    かばんの中身を見れば一発でわかる!「認知症になり…
  • 5
    「大谷翔平の唯一の欠点は...」ドジャース・ロバーツ…
  • 6
    1000人以上の女性と関係...英アンドルー王子、「称号…
  • 7
    増加する「子どもを外注」する親たち...ネオ・ネグレ…
  • 8
    悲しみで8年間「羽をむしり続けた」オウム...新たな…
  • 9
    バフェット指数が異常値──アメリカ株に「数世代で最…
  • 10
    お腹の脂肪を減らす「8つのヒント」とは?...食事以…
トランプ2.0記事まとめ
日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中