最新記事

アメリカ経済

年収25万ドルは金持ちじゃない?

「ブッシュ減税」の延長をめぐる議論で、年収25万ドル以上の世帯を除外するオバマ案に対して珍妙な反論が聞こえてくる

2010年9月21日(火)14時52分
ダニエル・グロス(ビジネス担当)

彼の「遺産」 ブッシュが01年、03年に実施した減税がオバマを苦しめる Kevin Lamarque-Reuters

 ブッシュ前政権が暫定的に所得税などの税率を引き下げた「ブッシュ減税」。その期限切れを年末に控えて、アメリカでは期間延長をめぐる議論が沸騰している。 
 
 オバマ大統領は年収25万ドル以上の世帯を除き、減税を恒久化することを提案。だが共和党は減税の恩恵はすべての国民が受けるべきだとして、全面的な延長を求めている。さらに、年収25万ドル以上を対象に増税を行えば、雇用を創出できる中小企業経営者といった中間層に悪影響を及ぼすと主張する。 
 
 国民の間でも、彼らだけ減税を打ち切るのは恣意的で不公平だとする意見は多い。しかし01〜08年の財政政策の大失敗のせいで、ブッシュ減税の見直しは避けられないのが現状だ。 
 
 また、この話になるとよく聞こえてくるのが「年収25万ドルでは本当の金持ちとは言えない」という不満だ。確かに金持ちか貧乏かは気持ちの問題でもある。年収が300万ドルあっても不幸で金に困っていると感じる人もいれば、年収3万ドルで欲しいものはすべて手に入れたと感じる人もいる。それでも、年収25万ドルの人間が金持ちの部類に入ることだけは間違いない。08年金融危機以降は特にそうだろう。

 米国勢局の08年調査によれば、国民の世帯収入の中間値は5万303ドルだ。07年から3・6%下落し、09年はさらなる下落が予想される。つまり25万ドルとは平均的なアメリカ人の年収の約5倍。08年には、年収25万ドル以上の世帯は約248万世帯で、全米の上位2・1%だけだった。

 もちろん州ごとに異なる生活費も考慮しなければならないし、近所の投資銀行家のボーナスが200万ドルだと聞けば、自分は金持ちじゃないと考えたくなる気持ちも分かる。でもどんなに金持ちが集まる地域でも、25万ドルの年収があれば胸を張っていられるはずだ。

今、あなたにオススメ

関連ワード

ニュース速報

ビジネス

「自動車産業の信頼損なう」と林官房長官、型式指定申

ビジネス

マツダ、「ロードスターRF」など2車種の出荷停止 

ワールド

メキシコ大統領選、シェインバウム氏勝利宣言 前任の

ワールド

トルコ製造業PMI、5月も50割れ 需要鈍化で生産
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
特集:イラン大統領墜落死の衝撃
2024年6月 4日号(5/28発売)

強硬派・ライシ大統領の突然の死はイスラム神権政治と中東の戦争をこう変える

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「肖像画ドレス」で歴史に名を刻んだ、プリンセス御用達

  • 3

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...すごすぎる日焼けあとが「痛そう」「ひどい」と話題に

  • 4

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 5

    1日のうち「立つ」と「座る」どっちが多いと健康的?…

  • 6

    ウクライナ「水上ドローン」が、ロシア黒海艦隊の「…

  • 7

    ヘンリー王子とメーガン妃の「ナイジェリア旅行」...…

  • 8

    「娘を見て!」「ひどい母親」 ケリー・ピケ、自分の…

  • 9

    中国海外留学生「借金踏み倒し=愛国活動」のありえ…

  • 10

    「みっともない!」 中東を訪問したプーチンとドイツ…

  • 1

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 2

    キャサリン妃「お気に入りブランド」廃業の衝撃...「肖像画ドレス」で歴史に名を刻んだ、プリンセス御用達

  • 3

    中国海軍「ドローン専用空母」が革命的すぎる...ゲームチェンジャーに?

  • 4

    自爆ドローンが、ロシア兵に「突撃」する瞬間映像を…

  • 5

    ハイマースに次ぐウクライナ軍の強い味方、長射程で…

  • 6

    仕事量も給料も減らさない「週4勤務」移行、アメリカ…

  • 7

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 8

    都知事選の候補者は東京の2つの課題から逃げるな

  • 9

    テイラー・スウィフトの大胆「肌見せ」ドレス写真...…

  • 10

    「自閉症をポジティブに語ろう」の風潮はつらい...母…

  • 1

    半裸でハマスに連れ去られた女性は骸骨で発見された──イスラエル人人質

  • 2

    EVが売れると自転車が爆発する...EV大国の中国で次々に明らかになる落とし穴

  • 3

    ウクライナ水上ドローンが、ヘリからの機銃掃射を「回避」してロシア黒海艦隊に突撃する緊迫の瞬間

  • 4

    新宿タワマン刺殺、和久井学容疑者に「同情」などで…

  • 5

    やっと撃墜できたドローンが、仲間の兵士に直撃する…

  • 6

    立ち上る火柱、転がる犠牲者、ロシアの軍用車両10両…

  • 7

    ロシア兵がウクライナ「ATACMS」ミサイルの直撃を受…

  • 8

    ロシアの「亀戦車」、次々と地雷を踏んで「連続爆発…

  • 9

    ヨルダン・ラジワ皇太子妃のマタニティ姿「デニム生地…

  • 10

    大阪万博でも「同じ過ち」が繰り返された...「太平洋…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中