最新記事

アップル

iPhoneアンテナこんなはずじゃ...

持ち方によって受信強度が落ちる問題で、アップルはアンテナの設計ミスとは認めなかった。iPhone 4発表時にジョブズはアンテナを真っ先に自慢していたのだが──

2010年7月5日(月)16時30分
ニック・サマーズ

 それは、アップルのスティーブ・ジョブズCEO(最高経営責任者)があるユーザーの問い合わせに対して「取るに足りない問題」と答えてから8日後だった。同社は7月2日、iPhone 4の持ち方次第で受信電波が消えてしまうことをホームページ上で認めた。

 だが同社は、あくまで受信強度の表示の問題としており、アンテナの設計ミスとは位置付けていない。旧モデルと異なり、iPhone 4のボディにはステンレス鋼が巻きつけてあり、それ自体がアンテナの役割を果たしている。

 受信の不具合は6月24日の発売直後にユーザーが気付いた。iPhone左下の細い黒い切れ目を指で覆うと受信電波が次第に落ちていき、完全に消えることもある。切れ目から指を離すと、安定した受信状態が復活する。アップルによると、ステンレス鋼に触らなければiPhone 4の受信感度は従来機種よりも高いという。

 ジョブズがメールに書いた「取るに足りない問題だ。そんな持ち方しなきゃいい」という言葉は、多くの人が失言と受け止めている。アップルをどこよりも批判し続けているテクノロジー・ブログサイト「ギズモード」は、アンテナ問題を改善するゴム製ケースの無料配布をアップルに求めるため、署名集めをフェースブック上で始めた。

 アップルにできるのは、修正ソフトウエアと醜いゴム製ケースを配布することくらいかもしれない。ただし同社が配布する修正ソフトは受信状態を正確に表示するためのもので、受信の感度を上げるわけではない。

「ほんとにクールな技術」

 ジョブズは6月7日にiPhone 4を発表したとき、ステンレスの帯とそこに入った切れ目がデザイン上どれほど重要かについて長々と話した。強調した8つの特長のうち、最初に取り上げたのがそれだった。

「周囲に巻かれたステンレス鋼がこの携帯の主要な構造要素で、切れ目が3カ所に入っています」と彼は言った。まさにその部分が今回の騒ぎにつながったのだから、きっと彼は後悔していることだろう。

「実はこれは素晴らしい技術の成果で、ステンレス鋼バンドをアンテナシステムの一部として使っているのです」。アップルファンの聴衆の大きな歓声を受けて、ジョブズは続ける。「統合型アンテナを携帯に組み込んでいます。これまでなかったことです!  ほんとにクールな技術です!」

 ジョブズが後悔しそうな発言がもう1つあった。「手で持ってみると、信じられないほどです」


*関連記事が7月7日(水)発売のニューズウィーク日本版に掲載されます。

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ビジネス

決算に厳しい目、FOMCは無風か=今週の米株式市場

ビジネス

中国工業部門企業利益、1─3月は4.3%増に鈍化 

ビジネス

米地銀リパブリック・ファーストが公的管理下に、同業

ワールド

米石油・ガス掘削リグ稼働数、22年2月以来の低水準
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:世界が愛した日本アニメ30
特集:世界が愛した日本アニメ30
2024年4月30日/2024年5月 7日号(4/23発売)

『AKIRA』からジブリ、『鬼滅の刃』まで、日本アニメは今や世界でより消費されている

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 2

    日本マンガ、なぜか北米で爆売れ中...背景に「コロナ」「ゲーム」「へのへのもへじ」

  • 3

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 4

    AIパイロットvs人間パイロット...F-16戦闘機で行われ…

  • 5

    ウクライナ軍ブラッドレー歩兵戦闘車の強力な射撃を…

  • 6

    走行中なのに運転手を殴打、バスは建物に衝突...衝撃…

  • 7

    ロシア黒海艦隊「最古の艦艇」がウクライナ軍による…

  • 8

    ロシア軍「Mi8ヘリコプター」にウクライナ軍HIMARSが…

  • 9

    19世紀イタリア、全世界を巻き込んだ論争『エドガル…

  • 10

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 1

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士が教えるスナック菓子を控えるよりも美容と健康に大事なこと

  • 2

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミサイル発射寸前の「砲撃成功」動画をウクライナが公開

  • 3

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価」されていると言える理由

  • 4

    「世界中の全機が要注意」...ボーイング内部告発者の…

  • 5

    医学博士で管理栄養士『100年栄養』の著者が警鐘を鳴…

  • 6

    タトゥーだけではなかった...バイキングが行っていた…

  • 7

    「すごい胸でごめんなさい」容姿と演技を酷評された…

  • 8

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 9

    「たった1日で1年分」の異常豪雨...「砂漠の地」ドバ…

  • 10

    ハーバード大学で150年以上教えられる作文術「オレオ…

  • 1

    韓国で「イエス・ジャパン」ブームが起きている

  • 2

    ロシアの迫撃砲RBU6000「スメルチ2」、爆発・炎上の瞬間映像をウクライナ軍が公開...ドネツク州で激戦続く

  • 3

    バルチック艦隊、自国の船をミサイル「誤爆」で撃沈する動画...「吹き飛ばされた」と遺族(ロシア報道)

  • 4

    最強生物クマムシが、大量の放射線を浴びても死なな…

  • 5

    「おやつの代わりにナッツ」でむしろ太る...医学博士…

  • 6

    ロシア「BUK-M1」が1発も撃てずに吹き飛ぶ瞬間...ミ…

  • 7

    ロシアが前線に投入した地上戦闘ロボットをウクライ…

  • 8

    「燃料気化爆弾」搭載ドローンがロシア軍拠点に突入…

  • 9

    世界3位の経済大国にはなれない?インドが「過大評価…

  • 10

    1500年前の中国の皇帝・武帝の「顔」、DNAから復元に…

日本再発見 シーズン2
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中