最新記事

新経済圏

中南米もアジアも「アメリカ抜き」が合言葉

もう対米輸出には頼れない──世界的な景気後退で地域の自由貿易圏構想が現実味を帯びてきた

2010年3月16日(火)14時19分
ケイティ・ベーカー

 2月23日、中南米・カリブ海諸国の首脳会議で、アメリカとカナダを除く国々で構成する新たな地域機構の創設が承認された。米主導のOAS(米州機構)とは異なる新機構の創設を、ベネズエラとボリビアの首脳はアメリカ帝国主義からの解放だと称賛した。さらにブラジルやメキシコといった穏健派も、不況に悩む北の隣国とのつながりを減らしたほうが、(特に貿易上は)プラスかもしれないとみている様子がうかがえた。

 これは中南米に限った動きではない。アジアでは以前から貿易圏構想があったが、日本と中国の対立や、日本と韓国がアメリカ市場との関係強化に熱心だったことなどが原因で実現しなかった。しかし世界的な景気後退を受け、アジアはもはや対米輸出に頼れないと気付いたと、専門家は言う。

 対米輸出の減少を受け、中国などは立て続けにアジア諸国との自由貿易協定を締結し始めている。日本と中国はアジア共通通貨の構想を持っており、専門家の間では10年以内にアジアはNAFTA(北米自由貿易協定)やEC(欧州共同体)のような自由貿易圏になるとの見方もある。こうした動きが進めば、各国が地域内の貿易を優先するようになり、いずれはアメリカの対アジアおよび対中南米貿易に影を落とす可能性も出てくる。

 とはいえ、どの経済圏も内なる壁に直面するだろう。中南米諸国は地域的な融合が得意とは言い難い。ブラジルなど南米5カ国の関税同盟である南部共同市場(メルコスル)は近年低迷しており、国家指導者同士の衝突も絶えない。一方のアジアでは、中国が覇権を握ることに懸念を抱く国が少なくない。

 それでも今回の景気後退は、アメリカ抜きの地域貿易圏構想が広まる転機になるかもしれない。

[2010年3月17日号掲載]

今、あなたにオススメ
ニュース速報

ワールド

ミネソタ州に兵士1500人派遣も、国防総省が準備命

ワールド

EUとメルコスルがFTAに署名、25年間にわたる交

ワールド

トランプ氏、各国に10億ドル拠出要求 新国際機関構

ワールド

米政権、ベネズエラ内相と接触 マドゥロ氏拘束前から
今、あなたにオススメ
MAGAZINE
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
特集:総力特集 ベネズエラ攻撃
2026年1月20日号(1/14発売)

深夜の精密攻撃でマドゥロ大統領拘束に成功したトランプ米大統領の本当の狙いは?

メールマガジンのご登録はこちらから。
人気ランキング
  • 1
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向」語る中、途方に暮れる個人旅行者たち
  • 2
    【銘柄】「住友金属鉱山」の株価が急上昇...銅の高騰に地政学リスク、その圧倒的な強みとは?
  • 3
    ピラミッドよりも昔なのに...湖底で見つかった古代の船が明かす、古代の人々の「超技術」
  • 4
    世界最大の埋蔵量でも「儲からない」? 米石油大手が…
  • 5
    中国のインフラ建設にインドが反発、ヒマラヤ奥地で…
  • 6
    DNAが「全て」ではなかった...親の「後天的な特徴」…
  • 7
    鉛筆やフォークを持てない、1人でトイレにも行けない…
  • 8
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世…
  • 9
    シャーロット英王女、「カリスマ的な貫禄」を見せつ…
  • 10
    【総選挙予測:自民は圧勝せず】立憲・公明連合は投…
  • 1
    【クイズ】韓国を抜いて1位に...世界で最も「出生率が低い」のはどこ?
  • 2
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 3
    上野公園「トイレ騒動」に見る、日本のトイレが「世界一危険」な理由
  • 4
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 5
    世界初で日本独自、南鳥島沖で始まるレアアース泥試…
  • 6
    正気を失った?──トランプ、エプスタイン疑惑につい…
  • 7
    母親が発見した「指先の謎の痣」が、1歳児の命を救っ…
  • 8
    韓国『日本人無料』の光と影 ── 日韓首脳が「未来志向…
  • 9
    「高額すぎる...」ポケモンとレゴのコラボ商品に広が…
  • 10
    中国が投稿したアメリカをラップで風刺するAI動画を…
  • 1
    【クイズ】世界で最も「レアアースの埋蔵量」が多い国はどこ?【2025年の話題クイズ5選】
  • 2
    90代でも元気な人が「必ず動かしている体の部位」とは何か...血管の名医がたどり着いた長生きの共通点
  • 3
    ウクライナ水中ドローンが、ロシア潜水艦を爆破...「史上初の攻撃成功」の裏に、戦略的な「事前攻撃」
  • 4
    アジアの豊かな国ランキング、日本は6位──IMF予測
  • 5
    中国製防空レーダーは米軍のベネズエラ攻撃に屈した─…
  • 6
    【クイズ】世界で唯一「蚊のいない国」はどこ?【202…
  • 7
    「腸が弱ると全身が乱れる」...消化器専門医がすすめ…
  • 8
    『SHOGUN 将軍』の成功は嬉しいが...岡田准一が目指…
  • 9
    【クイズ】本州で唯一「クマが生息していない県」は…
  • 10
    前進するロシア、忍び寄る限界...勝者に見えるプーチ…
トランプ2.0記事まとめ
Real
CHALLENGING INNOVATOR
Wonderful Story
MOOK
ニューズウィーク日本版別冊
ニューズウィーク日本版別冊

好評発売中